自治体のデータ活用に期待されることは何か

 自治体において活用が期待されるデータには2種類ある。自治体が業務を通して保有しているデータと、自治体外から取得したデータである。自治体内外のデータの利活用によって、行政事務の効率化だけではなく、住民向けサービスの質の向上、データに即した施策の実施(EBPM)による費用対効果の増加も実現することができる。

(1)自治体が保有するデータの活用
 自治体が保有する情報はビッグデータとして大きな価値がある。これらのデータの活用にあたってポイントとなるのは、データをいかに「使える」形にするかである。データを政策立案に生かすためには、データを活用しやすい形で整備すること、そして活用するための基盤の構築が重要となる。

 兵庫県姫路市では、効率的・効果的なデータ活用を行うため、データ分析基盤の構築・活用を進めている。この基盤では、データを蓄積するだけでなく、個人情報は匿名化・抽象化する、情報を地図上で可視化する等の工夫をこらし、データを簡単に活用できるようにしている。また、データの経年比較や、他の情報と掛け合わせた分析を容易に行うことができる。このデータ分析基盤を活用することで、地域ごとの人口分布や保育所との位置関係を視覚化し、保育所の適正配置をする等の政策立案を行っている。

 鹿児島県曽於市では、防災分野におけるデータを活用するための基盤となる地図情報システムを構築している。災害時は通報情報や現地調査の情報、ドローンで撮影した画像等を地図上に可視化することで、職員間での情報共有を素早く、正確に行うことが可能となる。また、「災害に備えたまちづくり」を目指し、防災カルテを災害現場や復旧工事個所の履歴と連携して活用したり、住民への情報発信に活用する等の、情報活用・公開に向けた検討を進めている。

 紙媒体で運用・管理している情報を単にデジタル化するだけでは価値は 生まれない。データを時系列で分析ができるようにする、地図情報と掛け合わせる、他のデータと合わせて分析をする等の工夫により、自治体の保有するデータの活用余地は大きく広がる。