リソースを可視化するリソースマネジメント

 ほとんどの企業では、予算に関しては必要最低限の管理ができている。逆に、できていないのが、現業とプロジェクトの兼務、複数プロジェクトの兼務、または、組織をまたがるプロジェクトアサインに関する要員リソースの稼働管理である。前回解説したように、兼務者の過負荷や、工数の分散のし過ぎなどによって、プロジェクトを成功させるために必要十分な工数を投入することができず、良い結果を出せていないことが多い。

 図5は、ある企業の月間稼働率の管理状況を示したものだが、現業の稼働率+プロジェクトの稼働率(複数プロジェクトの場合は合算)を将来予測と前月実績でモニタリングし、各人の稼働率は1.0(100%)に収まるようにした。ピーク時でも1.2(120%)を超えないよう、現業部門とプロジェクトとの調整を行った。一般的にプロジェクトのような変動要素が大きい非定形業務では見積もりよりも実稼働が大きくなる傾向がある。そのため、稼働率1.0でも残業が発生することが多く、稼働率のターゲットを通常時で1.0、ピーク時では1.2に置いたのである。

「過負荷の状態では、クリエイティビティが低下して、変革プロジェクトの成果を出すことができない」という基本認識のもと、過負荷状態の要員については、他の要員と稼働調整を行う。もし他の要員では代替できない場合は、プロジェクトの目標レベルを下げたり、プロジェクトの期間を伸ばしたりする。それでも調整がつかない場合は、プロジェクト自体を先送りするというマネジメントを行った。

 もし経営層が「努力や労力」ではなく、本当の意味での「ビジネス成果」を重視することを徹底すれば、要員リソースが足りなくても、追加プロジェクトを次々と要求することはなくなる。経営層がそういう方針を明示し、実際に行動で示すことによって、要員リソース不足でもプロジェクトを強行して、工数と時間を無駄にすることはなくなるのである。

ある企業におけるプロジェクトメンバーのリソースマネジメント