DXプロジェクトの準備は、軍事作戦の準備と類似点が多い
DXプロジェクトは、戦争における1つの戦い=「作戦」と似ている部分が多い。「作戦」というのは、最終的な目的である戦争での勝利に向けて、重要拠点の占領など段階的な目的を達成するために行われる軍事行動である。有名なものとしては太平洋戦争で日本が主力空母4隻を一気に失った「ミッドウェイ攻略作戦(MI作戦)」、旧ビルマで日本が無謀な攻勢をかけて大量の死傷者を出した「インパール作戦」、あるいは、映画「プライベート・ライアン」の舞台にもなった「ノルマンディー上陸作戦(ネプチューン作戦)」などがある。太平洋戦争の2つの作戦は、日本の組織論の必読書である「失敗の本質-日本軍の組織論的研究」(野中郁次郎他共著)でも取り上げられているので、そちらを一読していただきたい。
「作戦」とDXプロジェクトは、いずれも不確実性が高く、ほぼ確実に不慮の事態が発生するものであり、当初の計画を修正しながら、成功裏に完了、または、適切なタイミングで撤退するまで進めていくものである。そして、「作戦」の計画と準備に関しては、軍隊におけるエリートである作戦参謀らが、さまざまなケースを想定して、限られた期間で知恵を絞って、できるかぎり勝算を高める努力をする。その一方で、多くのプロジェクトにおいて、複数のケースを想定したシナリオプランニングが行われることは稀であるし、プロジェクトが始まってから具体化を始めることすらある。
「作戦」とDXプロジェクトの開始段階までの大まかなステップをまとめたのが、図1である。基本的には、まず、①目的/目標を定め、②最新の敵情を知り、③攻略方法を考え、④攻略に必要な戦力を特定し、⑤それを確保し、戦端を開く(プロジェクトを開始する)ことで、勝率を高め、勝利を得ることができる。