デジタルトランスフォーメーション(DX)による事業の再構築が問われる中、多くの企業で新規プロジェクトの立ち上げが活発になっている。だが、新規プロジェクトは必ずしも順調に進むわけではない。

 その課題の1つとなっているのがシステム開発におけるコミュニケーションの取り方。今回は東京ガスのサービス構築プロジェクト「東京ガスのハウスクリーニング」のケースからプロジェクトマネジメント(PM)の最適な運用について学んでみたい。同社の取り組みについて株式会社マネジメントソリューションズの山本知世氏が聞いた。

サービス開始まで準備期間は1年

 東京ガスでは現在、生活におけるさまざまなニーズや課題の解決のために新規ソリューションの創出に積極的に取り組んでいる。そうした取り組みの一環として今年5月から新たにスタートしたサービスが「東京ガスのハウスクリーニング」だ。ウェブを窓口に、品質にこだわった家事支援サービスを提供するというものだが、どのような経緯で生まれたプロジェクトなのだろうか。

 東京ガス暮らしサービス事業推進部サービス事業企画グループ共創サービス推進チームリーダーの浅田和美さんは次のように語る。

「現在、東京ガスでは提供するサービス領域の拡大を図っています。そうした中、成長市場である家事支援領域において、本業と親和性が高いサービスとして着目したのが、ハウスクリーニングでした。これまでも他社のハウスクリーニングを顧客紹介という形で取り扱っていたのですが、お客さまのニーズを汲み取り、自分たちでサービス開発を行いたいという思いから、元請けとなり、サービス提供することを決断しました」

 こうして生まれたプロジェクトは2020年の年明けから4人のメンバーでスタートしたが、サービス開始までに与えられた準備期間は1年余りと短かった。まずはどこから手を付けたのか。

「東京ガスとしてどんなサービスをするのか。当社のシンクタンクである東京ガス都市生活研究所をはじめ、さまざまなデータをもとに市場分析を行い30~40代の共働き世帯をターゲットとしました。カスタマージャーニーマップをつくりながら、お客さまが望むサービスやメニュー、さらに申し込みから作業終了までどのようなオペレーションをすればいいのか。ターゲットのニーズを常に意識し、しっかり準備しようと最初のフレームワークづくりに3カ月ほどかけました」