顧客や他社と社会価値を共創する。DX2.0エコシステム変革
CXにも3つの段階があります。CX1.0は「Customer Expectation」で、顧客が求めていることはこういうものだろうと企業側が推測して提供する、プロダクトアウトといわれるもの。今では否定的な見方をされることも多く、CX2.0として「Customer Experience」が登場しました。そしてCX3.0とされているのが「Customer Transformation」です。
例えば、顧客にこれまで通りのスナックを提供し、「カウチポテト」※1にするのではなく、正しい食生活、健康な生活へと行動変容を誘導し、ひいては豊かな社会をつくっていく。これがCX3.0です。2年前から消費者庁が「消費者志向経営」の推進をしていますが、目指すのはこれです。消費者と事業者の構図は、向かい合うのではなく、一緒に社会価値の創出に向かうように変化してきています。その先にはSDGsや地方創生、または冒頭に述べた18枚目のカードがあるでしょう。
エコシステム変革に当たって重要となる考え方があります。下図の三角形が企業の資産だとして、これを3つに分けます。一番重要なのが、三角形の頂上の資産で、その企業「ならでは」の資産。これは無形資産が多く、ものづくりでいえば生産設備ではなく生産技術。TPSのような「しくみ」です。一方、底にあるのは自前で持つ必要のない資産。他社とつながることで、より多くの許容量を持てる部分です。ここでいう「他社」は「同業種」のことを指します。

三角形の真ん中にあるのが、他社と組んで自社の頂上にある資産と掛け算する部分。ここでいう「他社」は「異業種」です。自社にないものを持つ他社とイノベーションを共創する、オープンイノベーションと呼ばれているものです。近年、フィンテックに代表される「〇〇テック」という言葉が乱立していますが、こちらは共創ではなく単なるデジタイズと言えます。異業種と組むことが重要です。
ただし、オープンイノベーションには、自社が頂上に素晴らしい資産を持っている必要があります。二流のものを相手に差し出すなら、相手も二流のものを出してきます。一番大事なのは、頂上の資産である自社の強みを磨くこと。その上で異業種と組む、これができると、進化を加速させるスピードの経済が生まれます。
事例としては、ユニクロなどを展開するファーストリテイリングが進めてきた「有明モデル」が挙げられます。同社は既存の商品開発から生産、物流、販売までのバリューチェーンを再構築し、バリューネットワークまたはバリューサークルといった形につくり変えました。顧客のオーダーを各プレーヤーで一気に情報共有し、5日で顧客の手元に届ける、といったことを実現しようとしています。
