高岡浩三氏が教える、いま必要な「マーケティング経営」

新しい現実は新しい問題を連れてくるを前提に問題の本質を追求!

高岡 浩三(ケイアンドカンパニー代表取締役)/2021.5.12

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※本コンテンツは、2021年3月16日に開催されたJBpress主催「第8回 DXフォーラム」の特別講演「DXによるマーケティング経営」の内容を採録したものです。

ケイアンドカンパニー株式会社
代表取締役
高岡 浩三氏

イノベーションは「認識されていない、解決を諦めている問題」の中から生まれる

 デジタルトランスフォーメーションをはじめ、ビジネストランスフォーメーションやコーポレートトランスフォーメーションなど、変革を意味する言葉が花盛りの時代になりました。

 なぜ今、私たちは変革しなければならないのでしょうか。
 日本のGDPは30年間成長していません。停滞の最も大きな要因は、先進国の中で最も急速に人口が減少し、最も高齢化が進んでいることだと考えられます。日本企業には、人口減少と高齢化により縮小するマーケットにおいて、持続的に売り上げと利益を向上させる「先進国型の利益ある成長モデル」が求められているのです。

 この世界有数の難しいマーケットで生き残るには、21世紀型の新たなマーケティングとイノベーションが不可欠と言えるでしょう。
 私は外資系飲料・食品メーカーであるネスレの日本法人で10年以上にわたり企業経営を担ってきました。海外進出や輸出で成長する選択肢がない環境で、私が考え、実践してきたマーケティングとイノベーションについてご紹介します。

 初めに、私が考えるマーケティングとイノベーションの言葉の意味について定義します。マーケティングとは、顧客の問題を解決することで付加価値をつくるプロセスと行動です。顧客の問題には2種類あります。「認識された問題」と「認識されていない、もしくは解決を諦めている問題」です。

 イノベーションは「認識されていない、もしくは解決を諦めている問題」から生まれます。つまり、市場調査で分かるような「認識された問題」の中には、イノベーションの種はないということになります。

 この前提を踏まえ、イノベーションについて少し具体的に考えてみます。例えば、人類には歴史的に「部屋の中が暑苦しい」という問題がありました。長い間、うちわや扇子のようなもので暑さをしのいでいたと考えられます。

 20世紀に入ると電気や石油が発明・発見され、扇風機が発明されました。もし扇風機の発明にあたり、市場調査を行っていたとしたら「扇風機(のようなもの)がほしい」という声があったでしょうか。おそらくないでしょう。

 また、扇風機の発明から数十年後には、エアコンが誕生しています。このときも消費者の声が反映されたわけではありません。暑さの原因は湿度にあると考えた科学者が発明したのです。イノベーションは「認識された問題」から生まれるわけではないということがよく分かる例です。

 扇風機やエアコンに限らず、イノベーションの歴史を振り返っていくと、別の事実も見えてきます。イノベーションは、人類が石炭や電気、石油のような新しいエネルギーを手にした時期に特に集中しているということです。

 1980年代から普及し始めたデジタルや人工知能も新しいエネルギーと言えます。この新しいエネルギーを使い、イノベーションを起こして成長してきたのが、GAFAやBATHのような企業ということになります。20世紀のイノベーションが製品中心であったのに対して21世紀のイノベーションがビジネスモデル中心であるという違いも特筆すべき点です。