一般に、支払手段には強い「ネットワーク外部性」があります。他の人々がどの程度使っているかが、その手段の利便性を大きく左右するわけです。
例えば、お店にとっては、客の多くが現金で支払っている間は、「現金お断り」という決断はなかなかできません。しかし、来店客の多くが現金ではなくカードなどで支払うようになると、現金の受け入れをやめてしまった方が、レジや金庫を管理したり、現金を運んだりする費用が節約できるということで、「現金お断り」の店舗が加速度的に増えていきます。これがまさに近年のスウェーデンの状況であり、このままキャッシュレス化が進めば、2025年にはスウェーデンの半分以上の店舗で現金が使えなくなる事態が予想されました。
こうした状況の中、「中央銀行には、倒産リスクのない支払手段を提供する責任があるのではないか」との問題意識から、デジタル通貨「e-Krona」の検討が2016年から開始されました。“Krona” とはスウェーデンの通貨単位「クローナ」であり、e-Kronaは「電子クローナ」という意味になります。
e-Krona導入の課題
その後、スウェーデンは約5年の歳月をかけてデジタル通貨の検討を進め、この4月には、これまで進められてきた「フェーズ1」という検討段階に関する報告書を公表しています。