デジタル化による電力消費

 現在、デジタル技術の急速な発展や、スマートフォンなどIT機器の世界的な普及を背景に、人類の生み出すデータ量は急速に拡大しています。仮に、データ処理量にほぼ比例して消費電力が増えると仮定すると、先行き、IT化に伴って消費電力も大幅に増加するという試算結果になります(2050年には2016年の約4,300倍)。

IT関連の消費電力予測<2030年および2050年は予測>
出所:国立研究開発法人科学技術振興機構・低炭素社会戦略センター

 ただし、この試算には今後の省エネ努力の効果は盛り込まれていません。日本ではさまざまな省エネ努力の結果、電力消費の伸びは1990年代以降、総じて抑制されています。もちろん、同時期から低成長経済に移行している日本とは異なり、世界にはこれから生活水準が向上していく途上国や新興国も多い中、wishful thinking(希望的観測)はできません。しかし、省エネ努力によって問題を緩和できる余地が大きいことも確かでしょう。

デジタル技術をエネルギーの節約に

 いずれにしても、IT化やデジタル化は、放っていても環境に優しくなるというものでもありません。これを地球温暖化対策と整合的なものにするには、意識的な努力が求められます。

 その一つとして、他の活動でのエネルギー消費の抑制にデジタル技術を活用することが挙げられます。デジタルデータの処理に電力を使っても、それ以上に他で電力消費を抑制できれば、全体としては良いわけです。

 例えば、地図アプリやGPSの普及により道に迷う車は大幅に減っているはずで、この面からエネルギー消費を減らしているでしょう。同様に、データの活用により物流が効率化され再配達などが減少すれば、やはりエネルギーの節約につながります。