ある企業では、次のような形式で組織的な試行錯誤に取り組んでいる。日頃のチーム・ミーティングで「悩ましい案件の実例」を提示し、「各自が考えるお客さまの反応・展開ストーリー」を15〜20分程度でディスカッションする。これは各自のとっさの判断・思考・表現力を習得・発揮する機会であるのと同時に、他者のノウハウ・スキルレベルを知る機会にもなっている。
上記のいずれの段階でも録音データ(商談時の声や文字などのやりとりの実録データ)を使用する。一人一人の日頃の顧客対応・商談の様子を録音し、管理者は必要に応じてその録音を聴き、「相手に最適な展開・伝え方であったか」を評価・フィードバックする。
以上のインサイドセールスでの実例を踏まえ、「リアル商談にもそこまでの育成・フォローが必要なのか」と思う方もいるだろう。しかし、各企業の管理者にインタビューすると「最近の営業担当者には手厚い育成も必要だ」という声は多い。ただ、「実施したくても、マネジメントの負荷がかかり過ぎて現実的に難しい」というのが共通意見である。
これまで、リアル商談の実態を把握するには、営業担当者への同行調査が必要だった。しかし、同行時間の確保・日程調整だけで(対象者数)×(サンプル数)が限られてしまう上に、顧客に気を遣われる、営業担当者が前面に出ようとしない、など期待通りに商談が進まないこともあり、負荷の割に真の実態が得られにくかった。
また、同行結果のフィードバックは、お互いの記憶が明らかなうちに行う必要がある。後日、営業担当者とそれを共有するのでは、論点・結果はきれいに整理されていても、臨場感に欠ける。最も伝えたい「その場で、何をどうやりとりしたか」を示すことに限界があり、仕組みとして同行を取り入れる企業も限られていた。
しかし、コロナ禍のオンライン商談をきっかけに、実態把握や育成方法も大きく変化しつつある。