営業人材の育成にはどんな手法が有効か?

 商談は営業の大事な場面である。しかし、リアルで行われる商談は営業担当者個人に依存していることが多い。

 本来、担当者一人一人の特性を見抜いて育成していくべきだ。だが、実際の管理者は、その担当者の商談場面を見る機会はほとんどなく、担当者から状況報告を受ける程度に留まっている。そして、助言・指導も、名プレイヤーだった管理者ほど自分のスタイルを押し付けてしまいがちである。結果、商談遂行上のポイントは、営業担当者一人一人が試行錯誤の末に体得していることも多い。

 一方、電話やメール、チャットなどの非対面営業(インサイドセールス)を中心としたある企業では、一人一人に応じた育成が行われている。次のように、細かく一人一人を見て、丁寧にサポートしている点ではリアル商談の担当者育成とは大きく異なっている。

①デビューに必要なスキルの獲得
 まず、採用・配属時の担当者スキルは低い前提である。そこから基本情報を提供して底上げを行い、求めるレベルへといち早く成長させるために、自社が求める最低限の対応・サービスレベルを示し、スクリプト(台本)を提供する。話し方の指導も徹底的に行う。

②さまざまなケースに関する具体的対処法の情報提供
 基本指導の後、「主要用件の6、7割は何とか外さずに対応できる」というレベルでデビューをさせる。そしてデビュー後も、担当者の対応を随時(少なくとも月次単位で)モニタリング・評価する。その結果から苦手な事象や未経験と思われる事象を取り上げ、具体的な対応例を含めて情報提供を行う。 内容自体は、過去の取引情報やWebサイトのアクセスログの変化に応じた商談の展開パターンなど、基本の再確認といった場合もあれば、取引先の特性・その時々の相手の反応に合わせた展開&話法の習得などさまざまだが、いずれも実例を各担当者のレベルに合わせて提供する。このため、担当者は早期に実践的な対応方法を広く認識し、案件の種類や対応幅を拡大することができる。

③組織的な試行錯誤の推進
 とはいえ、情報提供ばかりでは、その情報がないと何も判断できないように育ってしまう恐れがある。ある程度は提供された情報で対応できても、その場でとっさに判断し、仕切り、表現していく力が個人には求められる。「各自が考える」ことが不要なわけではなく、一人一人が考え、対応する行動を習慣化する必要がある。 重要なことは「一人一人の試行錯誤時間を、“組織として無駄にしない”」ことである。類似案件に対してそれぞれが悩む時間を極力減らし、より精度の高い「今後のアクションや解決方向が見える状況」をつくり出すことが求められる。