ツールを活用した実態把握と育成

◆商談の評価・フィードバック
 オンラインツールの活用で、同行せずとも部下/他者のリアル商談に立ち会うことができるようになった。 B to Bのある企業では、必要に応じてリアル商談でオンライン同席を行っているが、以前のような移動の負荷なく、同日に複数の営業担当者の実態を把握できるようになったという。

 リアル商談を録音・事後チェックしている企業もある。担当者とのスケジュール調整も不要で、倍速再生によって、より短時間での内容把握も可能になった。何よりも商談結果など担当者からの報告をもとに、あらかじめ把握したい対象のログを選ぶことができる。また、商談全てのモニタリングではなく部分チェックで済ますこともできる。 かつての同行調査と比較すると、「担当者が、相手とどのような流れでどうやりとりしているか・何をどう伝えているか」を把握する負荷は大きく軽減した。

◆商談実態の共有
 コロナ禍でリアル商談が強制的にオンラインへ切り替えられた当初、全員が「オンライン商談をどう進めるべきか」を考えなくてはならなかった。そうしたとき、個々で試行錯誤するよりも、お互いに学び合おうと、「画面映りや相手への魅せ方」を中心にオンライン商談の進め方検討や実践結果の共有を図った企業も多いだろう。

 しかし、その後はどうだろうか。 ある企業では、リアルとオンラインの併用型になった現在も、リアル商談を含めて録音し、必要に応じて音声データの文字化を図り、共有を続けている。ベテラン勢のさまざまなやりとり・伝え方が文字になっているため、若手層には個別具体的・実践的な例示として参考となり、好評だ。この企業では 特に、商談相手に対して営業担当者から積極的に問い掛けて情報を引き出すケースや、相手の状況を踏まえた提案が必要なケースを中心に共有している。複数回にわたって商談が続くケースも、各回を続けて読み進めることで全体ストーリーが確認できるようなっている。

 商談音声の全文文字起こしにはそれなりの時間も要す。しかし、音声を聞き返すよりも、文字データの方が振り返り・他者との共有の使い勝手はい。世の中には音声の文字化ツールもあれば、文字起こしを受託する企業も存在する。そうしたツールや企業の活用も手段の1つである。

◆システムと人に分けた評価の実施
 システムによる文字起こしの場合は、文字認識・変換のミスも生じ得る。しかし、ある企業では、システムの変換ミスも含めて商談の内容を評価することにした。評価項目をシステムによる自動判断・評価と、人による評価に分けて行い、それぞれ担当者へフィードバックしている。