(宗 裕二:日本能率協会コンサルティング 品質経営研究所所長、プリンシパル・コンサルタント)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大は製造業にも計り知れない影響を及ぼしました。本連載では、アフターコロナの時代にモノづくりの現場はどう変わるのか、どう変わっていくべきかについて、3回にわたって考えていきます。
「ウィズ・コロナ」のモノづくり現場
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、日本経済をはじめ世界の経済活動が極端に鈍くなってしまいました。予てからの懸案であった中国への依存リスクが現実のものとなり、日本でもマスクやガウンなど、必要な医療用品が極端な品薄状態となりました。
防疫のために行われたロックダウン(強制的な都市封鎖)は、必然的にモノづくり現場を麻痺させ、生産そのものが止まってしまいました。また、ロックダウンは都市などを「強制的に封鎖」することになり、当然流通も止まります。しかし、人が生活する上で最低限度必要な人の流れとモノの流れは止められませんので、正確には一部の職業に従事する人とモノを除く封鎖ということになるでしょう。友人に直接確認したところ、アメリカロサンゼルスでは一時外出が制限されたようですが、エッセンシャルな職業(例えば食料品を供給する仕事など)は、通常通りに出勤をして生産活動を続けていたようです。
一部の国や地域では、既に終息に向かったとして経済活動を再開するとの宣言を出しましたが、製品を出荷する相手側がロックダウンをしていたのでは、正常な生産活動にはなりません。パンデミック前の水準に戻るまでには相当な時間がかかると言われています。
私たち日本のモノ作りも、グローバリゼーションによって発展をしてきたと言っても過言ではないでしょう。人件費の安いところで生産活動を行うことによってコストダウンを果たし、製品価格を安価にすることで競争力を得てきたわけです。そうした製造戦略の生産拠点としての中心であった中国で、今回は最初のロックダウンが起こったわけですから、日本のモノづくり産業に大きな影響があることは間違いありません。
このパンデミックはグローバリゼーションの発展によって一気に世界へ広がって行ったと主張する方もいるようです。COVID-19が終息し、正常な生産活動に戻れるまでにどの程度の時間がかかるのか、まだ誰にもわかりません。今後はずっと、COVID-19が常に身近にあることを前提にして生活をしなければならないであろうと予測する人もいます。モノづくりの現場も、このパンデミックが終息した後、またはCOVID-19としばらく付き合いながら、どのような生産戦略を立てて前へ進むべきなのか、考えていかなければならないようです。