モノづくりも「地産地消」の時代に?

 日本政府が一連の緊急事態対応の一環として、日本企業の工場が日本に回帰するための支援として2200億円を、さらに中国以外の国に工場を移す場合の支援として235億円を予算化したとニュースで伝えられました。中国へ進出した日本のメーカーは、「日本へ回帰するか」「中国以外のアジアへ拠点を移すか」などを検討する良い機会となっています。自社の今後の製造戦略を考える良いチャンスであると捉えるべきでしょう。これは、医療関係の企業だけではなく、全ての海外進出企業に当てはまるでしょう。ただし、大掛かりな設備が必要な装置産業や、納入先との関係性の高い中小企業にとっては難しい問題かもしれません。

 ロックダウンのような措置は、伝染性の疫病だけでなく、戦争や暴動の勃発などによっても起こり得ます。また、地球環境の変化によって起こる気象災害や地震の発生など、想定外の事象が発生することによっても考えられます。日本企業の工場が当事国になくても、周辺国で緊急事態が勃発すれば同様の影響を受けるでしょう。

 いたずらに危機感を煽るものではありませんが、一度工場を建設すればそう簡単には移動できませんから、今から「動けること」を考えておくことは必要であろうと思います。恐らく、今までの常識以上に短いサイクルで次のステップへ移る必要があるのだろうと思います。しかし、単純に日本に戻って生産を開始すれば良いというわけではなく、コストも含めて十分に採算が取れなければ意味はありません。

 皆さんご承知の通り、「地産地消」という言葉があります。その地域で生産し、その地域で消費することを指します。主に農産物や水産物に対して使われる言葉ですが、製造業もナショナリズムが進むと、原材料の調達から消費までの一連のビジネスサイクルを限られた地域で回して利益を出す必要が出てくることでしょう。モノづくりの生産スタイルも「地産地消」を意識しなければならないのかもしれません。

 地産地消の大きなメリットの1つは流通が極端に少ないこと、それによって特に食品では新鮮さを落とさずに消費の段階まで進めることができることです。品質の視点からも、グローバル展開の流通には大きなリスクがあります。地産地消では当然流通コストのほとんど必要なくなります。そして、ロックダウンにも強いでしょう。ただし、全ての製品で確立できるわけではありません。特に、原材料の調達に課題があるでしょう。

変わりゆく日本の「マザー工場」

 品質保証のために、同じ基準で各国にある自社工場を点検することはとても重要な企業活動です。顧客に提供している製品が同じであれば、国や地域が変わっても同じ品質保証をするべきであると誰もが考えるでしょう。私もこうした視点で日本の企業の海外事業所を点検させていただくことがあります。私たちの重要な品質保証支援の仕事の1つでもあります。