そして最後の懸念点は「サーバーや回線などのテクニカルなトラブル」である。事実、今年9月にほぼデジタルで開催された「IFA 2020」(ドイツ・ベルリン。リアルイベントは完全招待制で実施)での経験では、開幕からほぼ半日以上、サーバーダウンでアクセスができない状態が続いていた。

 これらは確かにネガティブな側面だ。しかし、時差は生活習慣の工夫で克服できるし、ネットワーキングの機会づくりもCES 2021のレジストレーションのプロセスから推察する限り、主催者のCTAにもその準備はあるようだ。リモートワークでは不可能と思われたワークショップが工夫次第で運営できたように、要は前向きにトライしてみることだと思う。

 2010年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章 北海道大名誉教授の有名な言葉に「何もやらない人はセレンディピティに接する機会はない。一生懸命やって、真剣に新しいものを見つけようとやっている人には顔を出す」とあったことを思い出そう。

 システムのトラブルに関しては参加者サイドではどうすることもできない。しかし米国と米国に次いで参加者が多い東アジアの国々では昼夜が逆転しているので、アクセスが分散するのでは、という楽観的な見方もできる。CES 2021ではマイクロソフトが全面バックアップしているとのことなので、トラブル回避のお手並み拝見といったところだ。

見どころ(1)
基調講演:GMのメアリー・バーラCEOにサプライズはあるか

 注目の基調講演だが、今年のメインイベントとして、時系列順に、ベライゾンのハンス・ベストベリ、ゼネラルモーターズのメアリー・バーラ、AMDのリサ・スー博士の各社CEOが登壇する。開催日時と想定テーマ、登壇者のバックグラウンドを簡潔に整理しておいたのでぜひ参照してほしい。

CES2021の主な基調講演
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 毎年、会期2日目(一般公開日開始)の朝一番の基調講演がその年のハイライトという位置付けなので、今年はゼネラルモーターズのメアリー・バーラがその役回りに当たる。

 GMの工場作業員からの生え抜きでありGMインスティテュートで電気工学を学んだバックグラウンドを持つメアリー・バーラの経歴はまさに「立志伝」的で、彼女が推進するGMの「電気自動車(EV)への完全移行戦略」も興味深いことは確かだ。

 とは言うものの、昨年、CES 2021の基調講演の同じスロットに登壇し、オープンイノベーションでデジタル技術を導入、CX(顧客体験)とEX(従業員体験)を同時に向上させてデルタ航空の経営を刷新したエド・バスティアンCEOに比較すると、ややスケールダウンの感は否めない。ゼネラルモーターズ メアリー・バーラCEOの基調講演では起死回生の一大サプライズを期待したい。

 また、他の2名、米国のNO.1キャリアとして5Gを推進するベライゾンのハンス・ベストベリ、最先端のCPU「Ryzenシリーズ」でインテルを駆逐して勢い感が加速するAMDのリサ・スー博士は共に知名度は高いものの、CES 2019に続いての登壇であり、CESリピーターからの既視感は免れない。しかし旬の人選であり、両社の最先端の取り組みは、完全デジタル化で拡大するCES 2021の新規来場者を失望させることはないだろう。