「売らない店」が立ち返るべきブランドの原点とは?

コロナ禍が決定打、オンワードもついに戦略転換へ

朝岡 崇史/2020.11.14

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新宿3丁目の交差点から新宿駅方面を望む。建物のデザインもビジネスモデルも対照的な大型店舗が対峙していることに注目したい(著者撮影)

(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役)

「古き良き時代の百貨店とデジタル・ネイティブ・ストアの睨み合い」──筆者は新宿3丁目の交差点からJR新宿駅方面を眺める時、新宿通りを挟んでいつも目の当たりにする対照的な光景をこう呼ぶことにしている。

 通りの右側にあるのは、屋上の小洒落た看板が特徴のクラシカルな三越伊勢丹の新宿店。片や左側は、白く巨大なモノリス(一枚岩)を連想させる新宿マルイ本館である。新宿マルイ本館の1階が「売らない店舗」の代表格・アップル新宿であることが、両者の違いを一層、際立たせている。

 言うまでもなく、商品を仕入れ、華やかに陳列し、丁寧に接客しながらお客さまに販売する、良い意味でアナログな百貨店スタイルを継承するのが三越伊勢丹だ(最近はオンラインのチャネルも構築しているが・・・)。それに対し、アップルの旗艦店以外にもオーダースーツを手掛けるD2C企業「ファブリックトウキョウ」、クリエイター向け液晶ペンタブレットの「ワコム直営店」(新宿マルイアネックス)、主にスタートアップ企業向けにお客さまとのエンゲージメントの機会を提供する「b8ta(ベータ)」など、“試着やハンズオンは実店舗、購入はネット通販で”という形式の「売らない店舗」を戦略的にテナントに誘致するのがマルイの打ち出すデジタル時代の新しい販売スタイル、という色分けだ。

企業のイノベーティブな商品とお客さまとのエンゲージメントの機会を提供する「b8ta(ベータ)」(新宿マルイ本館1F)。ハンズオンを目的とした「売らない店舗」の典型だ(著者撮影)

 今回のテーマは、前者の百貨店モデルの一翼を長らく担ってきた大手アパレルのオンワードHD(以下、オンワード)の「売らない店舗」へのマーケティング戦略転換についてである。

 オンワードは新型コロナ禍で大きなダメージを受け、それが注目すべき経営判断に繋がった。2020年10月21日付の日本経済新聞朝刊によると、同社は2020年度中に試着のみで「売らない店舗」数店を出店する。

(参考)「『売らない店舗』オンワード出店 注文はネット、在庫圧縮」(2020年10月21日「日本経済新聞」)