手術支援ロボットで医師と病院の負担を軽減

A-Tractionが応えた「機能を絞って安価」のニーズ

JBpress/2020.10.30

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A-Traction代表取締役社長の安藤岳洋さん(左)と、最高財務責任者の篠原英次さん。安藤さんが開発を主導し、篠原さんが財務面を管理しています

※本コンテンツは、「柏の葉イノベーションフェス2020」と連動、柏の葉を中心に日々、最先端のテクノロジーを開発する企業・研究者を紹介するものです。
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手術後の傷が目立たず、患者の回復も早い術式として、腹腔鏡手術が近年普及してきました。しかし、腹腔鏡手術を行うには、術者である医師のほかに腹腔鏡を操作するスコーピスト、鉗子を操作する助手、麻酔医、器具を術者に手渡す看護師など、最低5人のスタッフが必要です。また、術者や助手、スコーピストは長時間じっと立ちながら、時には不自然な姿勢で手術を行います。これらの課題を解決する方法の1つとして手術支援ロボットがあります。しかし、今、国内の病院に導入されているものは、ハイスペックで高価なものがほとんどです。A-Tractionは、「ピンポイントでロボットのメリットを生かせる、より安価な手術支援ロボットが欲しい」という、国立がん研究センター東病院大腸外科長を務める伊藤雅昭医師の指導のもと、必要な機能に絞り込んだ手術支援ロボットを開発しています。

腹腔鏡手術の長所と短所

 従来、胃や大腸などの消化系の手術といえば、お腹を20〜30センチ切開し、医師が直接手を入れて行う開腹手術が主流でした。しかし、最近では、お腹を大きく切らずに、5ミリから12ミリ程度の小さな傷を4〜5カ所開け、内視鏡やハサミ、電気メス、ピンセットなどがついた棒状の器具(鉗子)を挿入し、手術を行う腹腔鏡手術が増えています。

 腹腔鏡手術の長所として、内視鏡で拡大した画面でより繊細な切除が行える、開腹手術に比べて傷が小さく目立たない、術後の痛みが少なく早期回復が見込める、傷の感染などのトラブルが少ない、出血量が少ない、などの点が挙げられます。

 短所は、手で直接臓器を触ることができずモニターを見ながらの手術になるので時間がかかる、技術を習得するのに時間や経験を要するので術者・施設間で技術の差が大きい、病変部の状態によっては対応できないため開腹手術に移行することもある、などです。

 A-Tractionの最高財務責任者である篠原英次さんはさらに、現在の腹腔鏡手術が抱える課題として、「多くのスタッフがいないと手術が成立しない」ことを指摘します。

 腹腔鏡手術には、右手に電気メス、左手に鉗子を持って患部を切り離していく「術者」の他に、術者の見たいところに的確に腹腔鏡を向けて視野を確保する「スコーピスト」、麻酔医、鉗子を使って臓器を牽引して術野を広げる「助手」、必要な機器を術者に手渡す看護師など、最低でも5人が関わることになります。

腹腔鏡手術には多くのスタッフが関わる必要があります

 手術を円滑に進めるためには、これら5人のスタッフのチームワークが求められます。特にスコーピストと術者の間のコミュニケーションが重要です。術者の思い通りの視野を確保することは、手術の成否を分けます。また、患部を切除するときに適切に臓器を引っ張っておかないと、うまく切れないため、鉗子で臓器を牽引する助手も大きな役割を果たしています。スコーピストや助手の役割を担当する若手医師は、術者が作業しやすいように無理な姿勢でじっとすることを強いられることも多く、体への負担が大きいことも課題です。