国内生産を可能にする「製品ではなくアート」の執念

ポストコロナのものづくり(4)シグマ、山木社長に聞く(中編)

みんなの試作広場/2020.12.16

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会津工場で働く社員。彼らの雇用を守ることが経営目標の上位という(写真:シグマ提供)

 過去30年にわたる生産基盤の海外シフトや中韓の勃興、さらにこの10年で加速したデジタル化の浸透によって、ものづくり大国としての日本の地位は揺らいでいる。ポストパンデミックの時代、イノベーションの主軸がデジタルに移っている今の時代に、日本の製造業はどのように戦うのか。その答えを探るべく、日本経済を牽引してきた「ものづくり」の雄の取り組みを追う。

 第4回は前回に引き続き日本有数の光学メーカー、シグマの山木和人社長に話を聞いた。「メイド・イン・ジャパン」にこだわるシグマの経営とはいかに。

・第1回「コロナを奇貨に、働き方、生産性、DXの三兎を追う」(アルプスアルパイン栗山年弘社長)

・第2回「マウスからカーナビまでニッチトップを体現する凄み」(アルプスアルパイン栗山年弘社長)

・第3回「そうは言っても、ものづくりの核は濃密な人間関係」(シグマ山木和人社長)

※みんなの試作広場はこちら

(文:杉浦美香@みんなの試作広場

ネジ、部品もすべて自社製造の一貫体制

──生産工場は福島県会津で従業員も会津の方々です。改めて、「メイド・イン・ジャパン」にこだわる理由を教えてください。

山木和人社長(以下、山木):大きくわけると2つあります。一つはレンズの特性です。レンズは製造が難しいアナログの塊。公差がぶれると、性能が変わってしまいます。最近、カメラの画素数が上がり、動画撮影も増えています。4K、8Kと超高画素の画像や映像がメインになっており、カメラも5000万画素とか、6000万画素になっていますが、レンズの性能が良くないと画素数はいくら上がっても(性能が)発揮できません。

シグマの山木和人社長。1968年3月生まれ。1987年、上智大学経済学部経営学科入学、93年、上智大学大学院経済学専攻博士課程前期卒業。同年、父親が創業したシグマに入社。2000年、取締役経営企画室長就任。03年取締役副社長に。05年、取締役社長。12年、代表取締役社長となり現在に至る(写真:杉浦美香)

 これはどこのメーカーでも同じですが、モジュール化されているのでカメラボディは割と簡単に組み立てることができます。それに対して、レンズは製造付加価値が高く、スキルが必要です。そのため最新鋭の機械を導入して海外、例えばベトナムで工場を造ろうと思っても装置産業と違ってすぐに製造するのは難しい。そこで、我々は海外展開はせず、国内工場のスキルを生かして高付加価値な製品を作り、一つあたりの平均単価を上げることで生き延びていくことに決めました。それが一つです。

 また、売り上げや利益はもちろん大切ですが、当社は未上場企業なので、雇用の維持が会社の経営目標の上位にきます。海外は人件費が安く、製造コストが日本ほどかかりません。場合によっては税制優遇もある。そのため、たいていの会社が海外展開していますが、そうすると日本の工場は古くなり、規模縮小や閉鎖を検討をせざるを得なくなる。

 こういった事態を避けて雇用を守るために、日本でも維持可能なビジネスを選んでやっていこうと考えて会津に残ることを決めたというのが経緯です。実際、金融機関などに「海外に今、進出しないと手遅れになりますよ」などと言われました。先代の父の時代は特にそうです(笑)。