新型コロナウイルスは世界中で感染が拡大しており、社会や経済に大きな影響を与えています。グローバル化が進む製造業のサプライチェーンが寸断されたことで、日本経済を支えてきた製造業も、その洗礼を受けています。ポスト・パンデミックの時代、日本の製造業は生き残りをかけてどのように戦うのか。その答えを探るべく、「ポスト・コロナ時代〜ものづくりの経営者たち」と題して、日本経済をけん引してきた「ものづくり」の雄のトップをインタビューしていきます。
第1回は、電子部品事業と車載情報事業を中核に世界展開するアルプスアルパインの栗山年弘社長です。アルプスアルパインはタクトスイッチで世界市場の約4割を占める電子部品メーカー。2020年3月期の連結売上高は約8100億円、連結営業利益は267億円に上ります。新型コロナの世界的な拡大でリーマンショックを越える影響を受けている自動車市場やモバイル市場。再興をかける世界的ものづくりメーカーのトップに話を聞きました。(聞き手は杉浦美香@みんなの試作広場)
売上高の8割を海外が占める
──新型コロナの影響でテレワークが進んでいます。ものづくりのテレワークの状況についてお教えください。
栗山年弘氏(以下、栗山):当社は、売り上げの8割を海外が占めています。生産も約3分の2は海外で、グローバルで生産・販売活動を進めているため、お客様の8割が海外です。一方、開発は日本が8割ほどを占めており、生産拠点も3分の1ほどは日本に残っています。この日本の生産拠点をマザーラインと位置づけています。
栗山:テレワークについていえば2年前(2018年)に制度化し、部分的には既に活用されていたので、今回の新型コロナ禍でもテレワークそのものは問題なく運用できています。欧州、米国では、一時的にロックダウンされた際にもオンライン会議などで対応しました。(日本での)緊急事態宣言のとき、出社率は首都圏では10%ぐらいに抑えました。現在は40%ぐらいとしていますが、それでも問題なく仕事は回っています。
開発拠点は東京にもありますが宮城、福島、新潟が主です。そこではテレワークは首都圏ほどは利用されてはいませんが、基本的に通勤は車なので感染のリスクはないと考えています。ただ、実験の評価は工場に行かなければならないし、製造現場はテレワークしていません。これら各拠点では、テレワーク感染予防というよりも、働き方改革と生産性向上のためとも言えます。
──ものづくりの現場では、どの程度のオンライン化が可能なのでしょうか。宮城県にある古川第2工場がスマート工場だと聞いています。
栗山:工場は日本だけではなく海外もありますので、今の生産状況、品質状況のすべてについて、パソコンだけではなくスマホでも見られるようにしたいと思っています。IoT、スマートファクトリーとよく言いますが、まだ部分的にしかできていません。それを今後、グローバルに『見える化』します。ものづくりのデジタル化、DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)に力を入れれば、ウィズコロナでも、ものづくりがちゃんとできるようになると思っています。