「スパリゾートハワイアンズ」で知られる常磐興産、「フェニックス・シーガイア・リゾート」などを巡って、2024年にはレジャー・ホテル業界では注目されるM&Aが続いた。パンデミックという特異な環境が数年続き、体力を消耗した企業は少なくない。人材不足や資材費の高騰など、足元の課題も切実だ。
こうした中で、各社はどのような生き残り策、そして成長シナリオを描いているのだろうか。フーリハン・ローキーのセクターレポート「レジャー・ホテルセクター マーケット動向レポート(2023年度)」を監修した高橋良友氏が解説する。
(*)当シリーズでは、フーリハン・ローキーが発表しているセクターレポートの監修者が、各業界における主要企業の業績・株価・注目のM&Aの動向から戦略を読み解きます。
2つのケースに見る、レジャー・ホテル業界のM&A
2024年9月、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレスG)が、「スパリゾートハワイアンズ」(福島県いわき市)を運営する常磐興産を買収することとなった。
常磐興産はコロナ期間中を含め、4期連続で最終赤字を計上。その後、黒字を回復したものの、持続的な経営戦略の策定は難しかったのだろう。取引金融機関も心配だったはずだ。今回のM&Aは金融機関主導で進んだものと推察される。
TOB価格は発表直前の株価に33%のプレミアムを加えた価格である。直近、M&Aのプレミアムは全業種平均で4割を超えており、決して「高すぎる価格」ではないが、買い手としては負担感があったのだろう。
そこで、「2段階のTOB」という手法が採用された。大株主や主力取引行は、プレミアムの付いてない2回目のTOBに応募する形である。こうした条件を受け入れたところに、大株主や金融機関の切迫感を垣間見ることができる。
最近のM&A事例をもう1つ紹介しよう。