直接触れずに開けられるドアオープナー
最後は、直接手で触れずにドアを開けることができる器具について、皆さんもテレビなどで見掛けたのではないだろうか。
なるべくモノに触らない、触ったら手洗い・消毒をする・・・私たちは、コロナで新しい行動、習慣を求められた。これまでにない行動に顧客は戸惑うが、その戸惑いを見逃さなかった好事例である。
気の利いた顧客がいれば、「ドアを開けたり、エレベーターのボタンを押すときなど、直接、手で触れなくてよい器具が欲しい」と言うかもしれない。しかし、その出会いに期待するのでは成功確率は下がる。「顧客の行動を観察する」ことは重要で、そこに合理的な動きがなければ、顧客は問題を抱えている可能性がある。触りたくなさそうにしている、肘で触っている、モノを使って開けている・・・。顧客の行動は、顧客自身が自覚していない問題を表現していることが多い。
ポイント:顧客行動から問題を捉えて先手を打つ
今回は、顧客の抱える問題を捉え、コロナ禍の環境変化に対応した3つの事例を見てきた。これは先に触れたように、マーケティングのイロハのイである。しかし、そのアプローチまでもが、「顧客のニーズを把握して、それに応える」という王道である必要はない。未曽有のコロナ禍だけでなく、顧客からニーズを引き出すには限界がある。私たちが顧客から引き出したいのはニーズという“答え”ではない。“問題”というヒントなのだ。
コンサルタント 渡邉聡(わたなべ さとし)
株式会社日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 CX・EXデザインセンター
シニア・コンサルタント
サービス産業を中心に、CS経営推進、サービスデザイン、新サービス開発、サービス生産性向上、業務改善、顧客対応力強化といったテーマで20年以上のコンサルティング経験を有する。著書に「サービス産業におけるサービス品質向上」など