新型コロナウィルスの影響は甚大である。2020年4月~6月期決算では、東証一部上場企業全体の売上高は前年同期比2割減、純利益は6割減となった。およそ3分の1の企業が純損失を計上している。Beforeコロナ時代は「攻めの経営」だったが、Withコロナ時代は終わりが見えない危機と同居しつつ「耐える経営」へと大きく180度転換した。
一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)というワードの氾濫に象徴されるように、企業活動の変革の機運は大きく高まっている。テレワークの浸透もその1つだろう。社員がオフィスに一堂に会して仕事をする。その前提から問われている。これは象徴的な事象の1つにすぎないが、企業活動のあらゆる前提を根本から問い直す機会になっている。
このコロナ危機に耐えるとともに、再成長の機会とするための「3つの処方箋」を示したい。
【処方箋①】コスト構造の総点検と聖域なき意思決定
今こそパンドラの箱を開けるときである。事業別のコスト構造を総点検し、改革を先送りにしていた不採算事業や、当初のミッションを果たせないまま放置された不良資産など、負の遺産を一掃すべきである。
多くの企業では既に緊急策として、不要不急の費用の抑制策をとっていると推測される。しかし、それは急場をしのぐ一時策にすぎない。今こそ経営を短期的に維持しつつ、将来に向けた体質転換に踏み込むべきである。そのためには事業別・製品別の採算評価が欠かせない。各事業が属する事業環境の成り行き評価を踏まえ、収益構造改革を図る事業を特定し、撤退や事業譲渡などあらゆる選択肢を排除せず、検討すべきである。
また、採算がとれている事業でも売上高減少により収益力は大きく低下している。今後、いつ終わるとも予測できないWithコロナの状況を生き抜くためのコスト構造を根本から構築すべきである。
売上面では製品別採算性評価を踏まえ、より収益力の高い製品への営業リソース投入を図るべきである。同時に受注時の利益率管理を徹底し、好況期に許された「政策的判断」という免罪符に基づく値引き受注を早期に見直すタイミングにある。
コスト面では損益分岐点を下げるために、購入品の転注や外注費の取り込み、自動化・省人化による労務費抑制など、費用特性を踏まえつつ、好況期にはとれなかった手法まで踏み込んだ施策立案が求められる。