【処方箋③】現場リーダーを抜擢し、次世代経営人材を育てる

 ここまで述べてきた改革活動は、社長および経営陣がリーダーシップを発揮し、けん引していくべきである。これまで意思決定を先送りしてきた事項、曖昧にしてきた事項に白黒の判断を付けることができるのは、経営の最終責任を担う社長しかいないからである。また、改革の推進には経営から随時、会社の目指すべき方向性を、社員に丁寧に説明する機会を設けることが望ましい。

 特に業績が悪化した企業では、社員は企業の先行きが見えないことに不安を感じる。そしてトップがその先行きを示さないことに疑心暗鬼になる。最悪、社内で業績悪化の"犯人捜し"が始まり、人心が会社から離れていく。そうなる前に、経営陣は会社が継続する必然性を説明するとともに、将来の成長に向けた改革方針を示す必要がある。

収益改革・再生シナリオ  

 改革の推進には部門の壁を越えて、意志ある現場リーダーを抜擢すべきである。会社や事業の将来を本気で考えるメンバーを結集し、3カ月~半年ほどかけて会社の抜本的な改革マスタープランを作成する。これら活動を通じて抜擢された改革メンバーは、会社を経営の視点から俯瞰し、事業環境の将来動向について深く考察する。改革マスタープランを作成した後は、各職場で働く現場メンバーを巻き込み、改革を推進するリーダーとなる。もちろん、これら改革メンバーが活動しやすいように多方面の支援やメッセージを発信することが経営陣の役割となる。

 筆者もリーマンショック時には多くの収益改革プロジェクトを支援した。これらの企業では、困難な改革を遂行し修羅場をくぐった改革メンバーは、今では多くが経営の中枢を担い、企業活動をけん引する立場で活躍されている。

 この3つの処方箋は、今回のコロナ危機をより強い会社に変える機会とするための必須条件と考える。コロナ危機で不確実性が高まる事業環境を、会社を根本から変革する好機と捉えてみてはいかがだろうか。

コンサルタント 栗栖 智宏(くりす ともひろ)

株式会社日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 経営戦略センター
センター長/チーフ・コンサルタント

JMAC入社以来、戦略コンサルタントとして10数年の経験を持ち、100社以上の企業への支援実績を有している。専門テーマは、中長期経営計画策定・事業戦略、新規事業企画、業務改革(BPR)など。コンサルティングの現場で培った経験とメソッドを生かし、若手~経営幹部まで幅広い階層での研修実績経験がある。