ニューノーマルに対応するデジタル活用とは

 それでは、新型コロナウイルスの感染拡大防止と感染予防について「これまでの常識」と「ニューノーマル」の何が違うのか、またニューノーマルに対応するデジタル活用で注目されるソリューションにはどんなものがあるのか。それを整理したのが下の表である。

アフターコロナ ニューノーマルに対応するデジタル活用(著者作成)
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 これまでの常識とニューノーマルの違いは「アナログ対応」か「デジタル対応」かというだけでなく、基本的な思想が「パッシブセーフティ」指向なのか「アクティブセーフティ」指向なのかというところに決定的な違いがあることに注意が必要である。

 まず、最初のキーワード「衛生管理の徹底」だが、これまでは「手洗いやアルコール消毒の励行」「外出時のマスク着用」が重要であるとされた。日本にとってはどちらも何十年も前から生活習慣として根付いていることであり、日本の累積の感染者数が中国・韓国や欧米諸国に比べて相対的に少ないことの理由として語られることも多い。

 しかし、特に外出時のマスク着用については、少なくとも感染が急速に拡大した3月から4月の上旬については、早朝から開店前のドラッグストアで行列をしても買えなかったというのが多くの日本人が共有するトラウマ体験であろう。

 では今後、衛生管理の徹底を図るためのニューノーマルはどうなるのか? 手洗いやアルコール消毒の励行は重要だが、今後は「感染者や濃厚接触者の居場所情報を事前に察知してその場所には近寄らない」「マスクの買占めや転売を防ぎ、誰でも平等に安心して購入できる仕組みを構築すること」が新常識になるだろう。

 前者については、シンガポール政府の近距離無線通信Bluetoothを使った感染者・濃厚接触者の追跡アプリ「Trace Together」(至近距離に一定時間以上一緒にいた人を特定)が、後者についてはマスク購入履歴管理(個人識別用ICチップのついた健康保険証を活用)とマスク在庫データ情報をアプリで提供した台湾保健当局の取り組み「Eマスク」システムが一定の成果を挙げた事例として評価されている。

(参考)
新型コロナウィルス感染追跡アプリ、期待のブルートゥース型に見えた課題」(『Newsweek』)
アベノマスク騒動を尻目に。台湾「Eマスク」システムの快進撃」(『Forbes Japan』)

 もちろん、この手のソリューションでは個人情報保護をどう扱うべきかという課題も見え隠れするものの、非常事態下において社会の公益と個人の基本的人権のどちらを優先するかの法整備は国会で既になされているということが前提になる。