スーパーやコンビニエンスストアなどのレジシステムは「セミセルフ型」(商品の読み取りは店員、決済は客)→「フルセルフ型」(商品の読み取りも客)→「POS搭載カート・スマホレジ型」(スマホのQRコードやカートで自動決済)→「完全ウォークスルー型」(AI認識で個人や買い物を特定)と進化してきている。
注目すべきは「完全ウォークスルー型」の導入で、よく知られている事例として東京港区のNEC本社の地下にある従業員向けの店舗での実証実験がある。
(参考)「NECが本社内にレジなし店舗、カメラや画像認識で決済可能に、20年2月オープン」(ダイアモンド・チェーンストア)
今年2月にスタートした取り組みは、店の入り口のカメラによるAI認証で個人を特定した後、店内AIカメラで客がどの商品を取ったかを自動認識、さらに店を出るタイミングで支払い金額を確定させて、後日、客である社員の給与口座から代金を引き落とすというものだ。
手に取った商品以外は、レジの店員とはおろか、現金もスマホすら「非接触」で買い物ができることは、入店時にスマホでのQRコード読み取りが必要なアマゾン・ゴー(Amazon GO)と比較してもアドバンテージになる。
「完全ウォークスルー型」は初期投資の高さがネックと見られているが、新型コロナ感染リスクを軽減する目的で客側が積極的に「非接触」を選び、店側の集客力が高まるのであれば、全国の店舗で導入のスピードが一気に上がる可能性があるだろう。
ニューノーマルに対しては「Think Positive」で
戦争、大恐慌、大地震、そして今回のようなパンデミックが起きると、賢い人たちはこれまでの常識や前提条件を疑い、人間にとって本当に何が一番大切か、次に何をすべきか真剣に考えるようになる。
テレビのワイドショーの論調のように、新型コロナが終息すれば、「元の生活(これまでの常識が支配する世界)に戻れる」と安易に考えてはいけない。
ニューノーマルに対してはむしろ「Think Positive」で受け入れ、日本が新しい時代のルールメーカーになるという気概を持つべきだ。
そして、ニューノーマルにスピード感を持って適応すること、そのために、これまでは様々な屁理屈をこねて導入を見送り、日本がグローバルスタンダードに劣後してきたデジタル活用を一気に挽回するチャンスであることを自覚して、官民挙げて本気で取り組むことが必要ではないだろうか。
そのためには、著者の専門分野でもある「デザイン思考」の考え方を導入し、「お客さま目線でアイデアを発想すること」「早い段階で失敗すること」、そして「失敗から学習し、アジャイル(迅速)に改善すること」が何よりも肝要だ。
「成功」の反対は「失敗」ではなく、「何もせず無作為を決め込むこと」に他ならないことを今回の行政のアナログな対応の稚拙さ(アベノマスク配布や国民一人あたり10万円の現金給付など)で身にしみてわかったはずだ。
ニューノーマルな時代の競争優位は「ヒト・モノ・カネ」のリソースの多さではなく、「失敗から学ぶ、学習速度のスピード」である。
コロナ後のニューノーマルに対応するデジタル活用は、日本という運命共同体で日々の生活を営む人たちにとってまさに「待ったなし」と言えるだろう。