これらのリスク調整作業は普通、投資家本人が自分でおこなうことになります。この作業を1つにまとめて商品化したのが「ライフサイクル型」「ターゲットイヤー型」などの一連のバランス型投信です。バランス型投信は、1つの投信のなかに株式や債券、不動産(リート)などさまざまな種類の資産が入っており、いわば1つの投信で幅広い投資対象に“お任せ”で分散投資できます。
「人気のバランス型投信、どう活用する?」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55220)でも述べたように、バランス型投信は比較的高コストであるという傾向があります。リスク調整を自分でおこなって節約するか、それともコストを払って商品に任せるか。投資家にはその判断が委ねられています。
結果としていまは、バランス型投信に資金が集まっているようです。モーニングスターが2019年10月の投信の資金流出・流入額を調べたところ、バランス型が流入額トップで流入超過は34カ月連続になった模様です。
現在は運用コストが比較的低めなバランス型投信も登場していますが、総じて高めなことは多くの個人投資家も知っているはず。投信の資金流出・流入額は、銀行や証券会社の販売戦略に左右される部分もあります。しかし、多少のコスト負担には目をつぶっても面倒なことは商品に任せてしまいたいという投資家心理が根強いということかもしれません。
以前も述べましたが、資産運用はできる限りシンプルにした方がいい。とはいえ、自分のリスク志向と残された時間に合わせてリスクを調整することは不可欠だし、複利効果を最大限に享受する運用コストの極少化も大事です。それらを両立する方法はあるのでしょうか。
リスク商品への投資額を徐々に減らしていく方法も
一つの選択肢として提案したいのが、リスク調整を金融商品とそのバランスではなく、投資金額でおこなう方法です。たとえば30代のときに、外国株式投信50%と国内株式投信50%の割合で合計8万円を積み立て投資していたとします。これを同じ割合のまま、6万円、4万円と金額を徐々に減らしていくのです。
この方法はバランス型投信の一種である「リスク・コントロール型」として使われています。リスク・コントロール型は短期金融資産(つまり現金)の比率を機動的に変動させるのですが、これを簡略化して応用するわけです。
生活費や預貯金とリスク資産は別のおサイフになっているという前提であれば、リスク商品への投資額を徐々に減らしたぶん、結果として預貯金などが増えていきます。資産バランスや市場動向などはあまり気にせず、シンプルに投資金額を減らす方法です。「面倒なのは嫌だけどコスト増も嫌」という方は検討してみる価値があるのではないでしょうか。
ただし、この投資金額を減らしてリスクを調整する方法は、資産運用の後半戦に適していると考えましょう。株価の下落などで資産価値が下がったといって投資金額を減らすと、将来の目標としていた収益に届かなくなる可能性が高まるので注意が必要です。