株式や債券、不動産投資信託(リート)などに分散投資するバランス型投信。その人気がじわじわと高まっています。ある外資系資産運用会社によると、2018年におけるバランス型投信の資金流入額は約1兆3100億円(前年比17%増)に上った模様で、この金額は直近で最も多かった2015年より約1100億円上回っています。

 バランス型は株式のみに投資する投信よりも比較的低リスクで、株価下落局面で下落幅が小さいとされることから、「守りに強い」投資商品といわれています。これが投資資金を集めている大きな理由のひとつとなっています。

投資対象や分散方法などで種類が豊富

 バランス型投信は、投資対象や分散方法などによってさまざまな種類があります。投資対象となる主な資産は「株式」「債券」「リート」の3つ。さらに、株式と債券をそれぞれ「国内」「先進国」「新興国」に、リートを「国内」「先進国」に分散し、合計8資産へ分散するタイプもあります。

 投資する資産の配分によっても種類が変わってきます。ご存知のように、株式やリートは比較的高リスクで債券(国内)は低リスクですから、株式とリートへの投資比率が高いタイプを「積極型」、国内債券の比率が高いタイプを「安定型」、その中間を「標準型」と呼ぶこともあります。

 株式・債券・リートへの投資配分を市場環境によって機動的に変えていく「TAA(Tactical Asset Allocation)型」「リスクコントロール型」。設定当初に目標年(ターゲットイヤー)を定めて、それに近づくにつれて株式の組み入れ比率を下げ、債券の比率を上げていく「ターゲットイヤー型」などもあります。

「つみたてNISA」の対象商品にも採用されており、ETFを含む全162本の投信のうち75本が資産複合型と呼ばれるバランス型になっています(2018年10月31日現在でインデックス投信を含む)。つみたてNISAからの資金流入も人気に拍車をかけた格好です。

効果を疑問視する声も

 こうしてみるとなかなか複雑でわかりづらいですが、バランス型投信を簡単に言うと、内外の株式・債券・リートなどに分散投資している投信。銀行や証券会社などでは「1銘柄で分散投資が実現するので、投資初心者が最初に買う投信として人気」と判断しているようです。

 投資初心者向けという評価が広がっているバランス型投信ですが、ファイナンシャルプランナーをはじめとする識者のなかには、その効果を疑問視する人が少なくありません。なぜでしょうか。

「投資資産全体として投資対象がわかりづらくなる」「税制優遇口座では期待リターンが高い資産に集中した方が有利」「超低金利下の現状では債券からのリターンが期待しにくい」「コストの妥当性が…」などが挙げられていますが、大きくは以下の3点に集約されそうです。

すでに分散投資している資産には効果が薄い

 1点めは欧州や日本のマイナス金利によって、債券からの利息収入が期待しづらくなっていること。バランス型投信の債券部分は、運用資産全体のリスク低減と安定的な収益源という役割を担っています。安定収益の機能が低下していることで、バランス型投信に投資する意味が弱くなっているということです。

 2点めは、投資配分を判断する難しさ。「守りに強い」とされるバランス型投信の多くが前述の「TAA型」「リスクコントロール型」で、株価下落が続くような局面でリスクを抑える効果が高いとされています。一方で、株価が上昇に転じたときに期待できるリターンは小さくならざるを得ません。また、市場環境に応じて投資配分を機動的に変更するのですが、そのタイミングを適切に判断するのは難しく、市場の後追い傾向になりがちです。

 そして3点め。個人の資産全体に対して、投資効率があまりよくないこと。すでに分散投資している資産にバランス型投信を追加したとしても、リスクコントロール効果は限定的です。これはあくまでたとえですが、さまざまな野菜やお肉が入っているカレーに違った種類の野菜・肉を使ったカレーを追加しても味はそう変わりません。カレー全体の味を変えたいなら、強めの調味料を入れたり水で薄めたりする方が効果的なのと似ています。

まずは市場へ参加して分散効果を学習する

 一般に広がっているバランス型投信の強みは市況や活用法などによって違ってくる、ということはいえそうです。

 資産運用の学習を重ねて、膨大な過去データを検証してから投資しても、リターンを得るときは得るし、損失が出るときは出てしまいます。大事なのは市場に参加すること。事前の学習や過去データの検証に加えて、まずは少額からでも投資をスタートさせる。これが最も学習効果があるといわれています。

 事前にしっかり準備して、最初からインデックス投信で内外の株式・債券・リートなどでグローバル分散投資を成立させるのが最も合理的でしょう。しかし、机上の学習が長引くと投資期間が短くなったり、市場参加への踏ん切りがつかなくなったりするかもしれません。まずはバランス型投信で市場に参加して、値動きの特徴やその原因などをひとつひとつ身に付けていくのは悪くない方法だと思われます。

いつも正しい投資行動がとれるとは限らない

 資産運用は長期投資が基本なので、投資期間中にはさまざまなライフイベントや市場環境に出会います。昨今のように株価が大きく動き、株価下落局面や景気後退期入りがささやかれるようなときは、何が正しい投資行動なのか不安になることもあるでしょう。

 低コストのインデックス投信による積立投資でグローバル分散投資を実行している人は、そのまま変更することなく継続すべき。おそらくこれが合理的な判断だと思われます。でも、不安な気持ちもよくわかります。このまま積立投資を続けて大丈夫なのだろうか。もっと他に方法はないのだろうか。この不安はいつまで続くのだろうか――。

 人間はいつも合理的な行動ができるとは限りません。ストレス学の始祖ハンス・セリエ博士を日本に初めて招聘した医学博士の藤井尚治氏は著書のなかで「真実はいつも中庸にあるから、知で分析して情で全体のバランスをとることが大事」といっています。経済合理性を追求しつつも、あえて不安にまかせてジタバタしてみると気持ちが落ち着くかもしれません。

等分投資の低コストなインデックス投信も

 いっそ経済合理性に目をつぶり、素直にバランス型投信を買ってみてはどうでしょう。それで自分が納得・安心できるのなら、投資する価値は十分にあると思います。

 その際は株式投信すべてを売却するのは避けて、たとえば株式投信の一部を売却して、内外の株式・債券・リートに分散投資するインデックス投信を買ってみる。TAA型やリスクコントロール型のバランス型投信ではなく、前述の8資産に等分(12.5%ずつ)投資する低コストのインデックス投信がよいでしょう。

 資産運用は経済合理性を冷静に追求することが基本ですが、そう簡単ではありません。不安なまま、自信がないまま投資を続けることの方が、デメリットが大きいと考えることもできます。前述の藤井氏は「全体のバランスを上手にとる人のことを懐深い人、腰がすわっている人と呼ぶ」と書いています。

 腰がすわった資産運用のために、たまには情に流されてみるのもよいかもしれません。