FTSEが「グローバル株式指数」へ組み入れ
さらに最近、リートにとって中期的な成長要因となることが期待できるできごとがありました。2019年10月、ロンドン証券取引所の子会社で指数算出会社であるFTSEが、2020年9月から日本のリートを「FTSEグローバル株式指数」に組み入れると発表したのです。今後、四半期ごとに4回に分けて25%ずつ組み入れ、2021年6月に組み入れが完了する予定です。
「FTSEグローバル株式指数」は世界49市場の株式やリートを組み入れており、機関投資家の間で広く使われています。同指数に連動するように運用される投信や海外ファンドなどでは、同じリートを指数と同比率分、新しく買い付けなければなりません。ある証券会社の試算によると、日本の大型リート9~10日分の売買代金に相当する買い需要が生まれるとしています。指数の買い付けが終わるまでの2年近く、リートとってのプラス要因になると考えられます。
リートの現状をまとめると、歴史的な高値圏にあるものの利回り水準はいまだ健全といえる水準にあり、今後のプラス要因も控えていることから、あと数年は期待できる余地がある――というところでしょうか。
リートに投資する3つの方法の長短
個人投資家がリートに投資したい場合、(1)リートの個別銘柄を買う、(2)リートを組み入れた投信を買う、(3)リートに投資するETF(上場投資信託)を買う、の3つの方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあります。
リートの個別銘柄は証券会社で買うことができます。2019年10月現在、東証に上場しているリート(Jリート)は63銘柄。株式と同様に売買することができます。不動産に直接投資するよりは少額から投資できますが、最低投資金額は数万円~80万円超まであり、10万~20万円が多いようです。投信やETFに比べると高くなっています。
リートを組み入れた投信を買うのが最も手軽かもしれません。モーニングスターの分類では、国内REIT型が89本、国際REIT型は231本あります。「つみたてNISA」で購入できればベストなのですが、現在は複合指数型や海外型のなかで投資対象の一部としてリートを組み入れている投信しかありません。リートだけに投資する投信を選びたい場合は別に購入する必要があります。
リートに投資するETFは14銘柄(外国の法律で組成された外国籍ETFを除く)。「東証REIT指数」に連動することをめざしてリート市場全体に投資するETFが10銘柄、「高利回りJリート指数」に連動することをめざして予想分配金利回りが比較的高い銘柄に投資するETFが1銘柄、「東証REIT Core指数」に連動することをめざして時価総額が比較的大きい銘柄に投資するETFが3銘柄あります。
ETFの運用コストの低さはインデックス投信と双璧でしょう。ETFはこれまで流動性の低さが指摘され、売りたいときに売れない、買いたいときに買えない可能性がありました。しかし、東証が2018年7月に「マーケットメイク制度」を導入。指定された証券会社などの専門業者(マーケットメイカー)が買い注文・売り注文をいつも出し続けることで流動性が高まり、より売買しやすくなっています。
マーケットメイク制度の対象ETFは銘柄別に設定されています。リートETFはほとんどが対象となっていますが、購入時には確認が必要です。
東京都心部では新しい大型オフィスビルがどんどん建ち上がり、それを見るたびに不動産市場の勢いを感じます。論理的な市場見通しで成長余地があるといわれますが、肌感として「こんなに建てて入居する企業がどれほどあるのか」と思わずにはいられません。リート投資は、長期の資産形成というより“数年間楽しめればいい”と捉えた方が賢明なのかもしれません。
専門家のなかには「リートの価格変動リスクは株式と同程度」と指摘する人もいます。リートへの投資は、株式や債券との分散投資を基本に、少額の積み立てで時間分散も図りたいところです。