結局のところ、働き方改革を何のためにやるのかが明確になっていないことが問題なのです。「法令遵守のため」「世の中の流れだから」という程度の感覚で、働き方改革に取り組んでいる企業も少なくないでしょう。第一歩として、何のために働き方改革をやるのかを明確にする必要があります。議論を進めていけば気が付くはずです。本当にやるべきことは、働き方を変えることではなく、成果を出すことであると。それは今よりも利益率の高いビジネスを生み出すことかもしれません。こうした考え方に基づき、私は働き方改革という表現を、「成果の出し方改革」に改めるべきだと言っています。

本気で考えれば生産性は上がる
社員にも目的や成果が見えようになる

 事例を1つ紹介します。SCSKの働き方改革は、当時の社長だった中井戸 信英氏によるトップ主導で行われました。中井戸氏は当初、SIer(システムインテグレーター)の労働環境の悪さに驚き、これでは業績が上がるはずがないと考えたそうです。中井戸氏の働き方改革の根底にあった考えは「社員に人間らしい健康的な働き方をさせ、クリエイティビティを発揮できるようにすれば、業績も上がる」という1点のみでした。

 初めにオフィスを移転して環境を改善しました。残業削減を進めるに当たっては「日次・週次の業務優先順位付け・見える化」「1Best運動(電話1分・議事録1枚・会議1時間)」など、多岐にわたるルールを徹底しています。特に私が興味深いと感じたのは、業務プロセスを詳細に見直し、顧客対応にまで徹底した点です。段取りを重視し、事前の打ち合わせを繰り返すことで、プロジェクト全体の稼働時間の大幅な削減に成功しました。結果的に、増収増益、無事故プロジェクト率でも業界屈指の地位を達成しています。極め付きは「トップの手紙作戦」。トップが、SE(システムエンジニア)が常駐している客先などに、SCSKが働き方改革をしている旨を伝える手紙を送って理解を求めたのです。

 皆さんにはSCSKのケースから、本気で考えれば生産性は上がるし、社員にも目的や成果が見えるようになるということを理解していただければと思います。もちろん全てが一筋縄でいくとは限りません。SCSKの場合、最初のうちは有給休暇が使い切れない社員が続出したそうです。日本人には休み方が下手な人が多い。これは余談ですが、就業時間中の休憩の仕方や年間の休暇の過ごし方など、休むことについて深く考える“休み方改革”を検討してみるのも良いかもしれません。