(写真左)シスコシステムズ 執行役員 パートナー事業統括 吉井彩乃 氏(写真右)ネットワンパートナーズ 取締役 執行役員 岸上要太 氏
AIシフトが加速する今、デジタル業界ではパートナービジネスの抜本的な見直しが世界的に進行している。ネットワーク製品の領域で長年市場を牽引してきたシスコシステムズも、その例外ではない。創業以来続いてきた旧来のパートナー制度を刷新し、2026年1月25日、「Cisco 360 パートナープログラム」へと生まれ変わる。
このグローバル戦略を日本市場で最適に機能させるため、シスコ日本法人は、国内有数のディストリビューターであるネットワンパートナーズ(以下、NOP)と協業し、日本市場における新たな枠組みの展開を進めてきた。
歴史的な転換期を迎えたシスコのパートナープログラムは、国内市場にどのような「価値」と「変革」をもたらすのか。NOP 取締役 執行役員 岸上要太氏と、シスコ日本法人の執行役員 パートナー事業統括 吉井彩乃氏が、この新時代のパートナーシップ戦略について語り合った。
シスコがパートナープログラムを刷新する理由
岸上要太氏(以下、敬称略) NOPは2008年の設立以来、ネットワーク系のディストリビューターとして活動してきました。従来はシスコをはじめとする先進的なハードウェア商材を仕入れ、そこに独自の技術要素を付加してリセラーであるSIer、つまりパートナー企業様に提供してきました。しかし近年では、単なる商材の販売にとどまらず、セキュリティや可視化に加え、運用の自動化やデータ活用まで含めた、よりトータルなプラットフォームとしての提供が求められるようになってきたと感じています。
AIシフトが加速する昨今、市場からの要求がどんどん複雑化していく中で、自社のソリューションやその価値を正しくユーザー企業に伝えるようにするためにグローバルで各ベンダーがパートナービジネスを強化しているように見えますが、シスコではその辺りをどのように捉えていますか?

吉井彩乃氏(以下、敬称略) シスコは伝統的にパートナービジネスを重視しており、売上の95%以上がパートナー経由であり、日本も同様です。一方で、近年シスコのソリューション自体がネットワークのハードウェア製品からソフトウェア領域を含めたものへとシフトした結果、グローバルの売上はすでに56%がソフトウェアとサブスクリプション型のビジネスになっており、岸上さんのおっしゃる通りお客様のニーズにも変化が生じています。こうした市場の変化を踏まえパートナープログラムも、従来の売り切り型ではなく、製品導入後に最適なシステムを構築し、その後も継続して使い続けていただくようなライフサイクル型へと移行させる必要性を感じていました。
岸上 サブスクリプションビジネスの影響度は大きいですね。パートナービジネスでの新たな付加価値創出を促すために、どのようなプログラムに刷新されたのでしょうか?
吉井 2026年1月25日から新たに「Cisco 360 パートナープログラム」を開始します。顧客ニーズが多様化・高度化する中で、パートナーの皆様が独自のサービスや付加価値を創出しやすいように、トレーニングや技術支援、カスタマーサクセス、マネージドサービスといった新しい取り組みへの挑戦を後押しするインセンティブ設計を行っています。
その際、当社はパートナーの声を聞きながらプログラムの改変を行い、発表から開始まで1年以上かけて丁寧に制度設計を進めてきました。特に日本の市場は独自性が強く難しさがあるのですが、NOPからはパートナー向け、ディストリビューター向けという2つのプログラムに貴重なフィードバックを頂き大変助かっています。
岸上 NOPは単なる販売代理を超え、パートナー企業様との連携の起点となる存在であるべきと考えています。そこで、リセラーの皆様に対して「プログラムが変わったのでお願いします」という対応では不十分との思いから、そもそものシスコの意図やどの部分をどう変えていくべきか、さらには多くのリベートが入るようにするためにどうすればいいかまで踏み込んだ、伴走型の「Cisco 360 コンサルティングサービス」も開始しました。
マーケットにより特化したケイパビリティが重要に
吉井 単なる販売代理を超える存在となるために、NOPでは具体的にどのような変革を進めているのでしょうか?

岸上 当社はこれまで、ディストリビューターとして技術支援や保守サービスという付加価値を付けてパートナー企業様に商材を提供してきましたが、商材の幅が広がる中で今後はより総合的な技術力と先回りの提案力が求められるようになると考えています。そこで我々が重視しているのは、マーケットへの特化です。
マーケットの捉え方には「市場」と「技術」という領域の2つの軸があります。教育・自治体市場では最新状況を継続的にキャッチアップするための専門チームを設置しています。そのチームでは、国が公表する各種ガイドラインを読み込み、要件や方向性を整理するとともに、現場の利用実態を踏まえたマルチベンダー環境での無線パフォーマンス検証を実施し、教室・庁舎といった高密度/多端末環境での設計・運用に活かせる知見を蓄積してきました。
さらに、シスコと共同で、IPoE環境においてゼロトラストを実現するための推奨設定ガイドラインを作成し、導入時の論点や設計ポイントを整理しています。これらの検証結果やガイドラインは、教育・自治体市場における提案品質の向上に向けて、パートナー企業の皆様へ提供しています。また、昨今では従来パートナー企業様が担っていた技術領域に関して、当社に協力を求めるケースが増えています。上記領域だけでなく、OTセキュリティ領域など個々に行っていた支援をさまざまなパートナー企業様にも提供できるように、データやAIを前提にプラットフォームとして再構成しながら体系化・標準化して横展開する取り組みが必要になるとみています。
吉井 シスコもGIGAスクールには第1期から注力してきました。NOPは実績があるので、第2期も引き続き期待しています。シスコのマーケット戦略としては、サービスプロバイダー、ラージエンタープライズおよび公共のお客様への注力を継続しつつ、ミッドエンタープライズやSMB(中堅中小企業)や地域にも力を入れる「両輪の戦略」を展開していきます。
日本市場は多様性があり、地域や業種ごとに異なる課題やニーズがあるのが特徴です。そのため、パートナーの皆様と連携し、日本のお客様の課題に根ざした対応や提案力を高めていくことが不可欠と考えている中で、NOPが我々との共同検証の情報をパートナーと共有していただける活動は、大変価値があるものと捉えています。
期待が高まる「AI×社会インフラ」市場
吉井 ほかにも注視しているマーケットはありますか?
岸上 社会インフラ領域です。特にワット・ビット連携構想を中心に、電力・エネルギー分野に注目しています。同構想は、電力と通信のインフラを連携させて、AIデータセンターやデジタル変電所などの新たな社会基盤を構築する取り組みですが、それらに対して事前検証を行える専用のラボを作り、パートナー企業様を支援していく計画です。
具体的な技術領域では、AIを中核に据えたシステム同士を結ぶ超低遅延ネットワークと、GPUを中心に構成されるAIデータセンターに注目しています。この2つは社会がAI活用を進めていく際の重要な要素であり、実装時にはサーバーやストレージ、GPUをどう使うかだけでなく、ネットワークも含めたトータルな設計が必要になります。その状況に対し、ネットワークのみならずコンピューティングまで評価する活動を行う予定で、パートナー企業様にも活用してもらえるラボの構築を検討しているところです。
吉井 シスコとしても、AIデータセンターやデジタル変電所、OTセキュリティといった先端領域での技術革新を積極的に支援しています。NOPとの協業を通じ、現場のニーズに即した技術検証やユースケース創出を進めることで、社会インフラのデジタル化や脱炭素化といった社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。
シスコのワンプラットフォーム戦略を新生NOPが支える
岸上 シスコでは、今後のソリューション戦略をどのように考えていますか。
吉井 まず、従来の製品群のベースにAIを組み込んでいきます。その上で「One Cisco Story」と呼ぶプラットフォーム戦略のもと、「AI 対応データセンター」「未来を見据えたワークプレイス」「デジタルレジリエンス」の3つにテーマを分け、ネットワーク単体ではなくその上で稼働するアプリケーションまでを想定し、複数のソリューションを組み合わせたストーリーを用意して市場に展開していきます。
岸上 そのために、具体的なプロダクトの拡充も注力されていますよね。
吉井 はい。1つのポイントになるプロダクトが、2024年に買収したログ収集&データ分析プラットフォームの「Splunk」です。元々はセキュリティや運用領域で展開しているソリューションですが、それをネットワークやデータセンター領域にも組み込んでいきます。Splunkに関して日本ではすでに知見を持つSIerも多く、今後のソリューション連携への大きな期待も感じています。
岸上 シスコは世界を代表する企業であり、その戦略から学ぶところは多いです。新しい戦略も納得できるものであり、一緒にゴールを目指していきたいですね。
ネットワングループはSCSKと2027年に経営統合しますが、先行して2026年にディストリビューター事業を統合します。SCSKはセキュリティが強いので、今後AIセキュリティ領域の強化が見込めますし、ネットワークからコンピューティングまでの総合的な提案力と投資力が備わるので、当社の今後の展開にぜひご期待いただきたいと思います。
吉井 シスコのグローバル戦略を日本の市場に合った形で独自の戦略に落とし込むにあたり、NOPは的確なフィードバックを頂ける信頼できる存在です。SCSKとの統合に関しても、新たな販売チャネルとそれぞれの強みを生かした相乗効果で、シスコの新しい領域のビジネスをさらに拡大していただけることを期待しています。
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