人生100年時代が近づき、超高齢社会の課題解決に向けて独自の教育制度や雇用制度を設ける企業が増えている。オープンイノベーションへの取り組みでも、企業対企業だけではなく、企業対個人による共創が増えていくのではないだろうか。東洋経済新報社主催の「プラチナキャリア・アワード」第1回受賞企業が行う人材育成制度「SCSK i-University」や高年齢者の雇用を促進する「アクティブシニア社員」等の取り組みを取り上げつつ、人生100年時代のオープンイノベーションの在り方を考察する。
「人生100年時代」のビジネスパーソンは生涯現役
2019年5月、東洋経済新報社主催の第1回「プラチナキャリア・アワード」の受賞企業が決定した。プラチナキャリア・アワードは、長期的な視点で人材育成に取り組み、社員が年齢によらず活躍できる場を持つ等、人生100年時代を見据えて社会の課題解決に取り組む企業に贈られる。
最優秀賞はIT関連企業のSCSK、優秀賞は伊藤園、T&Dホールディングス、マツダ、丸井グループ、東洋経済賞はファンケルがそれぞれ受賞した。
プラチナキャリアとは、年齢に関係なく必要なスキルを習得し、そのスキルを存分に仕事へ生かし、社内だけでなく、広く社会に目を向けて課題解決に向けて努力するキャリア像を指す。東洋経済新報社は、プラチナ・アワードを通して、プラチナキャリアという理念を社会に浸透させつつ、“年齢を重ねても活躍できる人材を育成し創出する重要性”を企業に訴えている。
プラチナキャリアは、人生100年時代を迎える日本にあたって、今後重要なキーワードとなるだろう。スキルやノウハウを持つ優秀なシニア人材は、減少する若い労働力をカバーする存在となりうる。
少子高齢化による労働人口の減少の危機が叫ばれて久しいが、長寿命化は日本にとっては一つのチャンスでもある。なぜなら、高齢者は一昔前に比べて「若返り」をしているからだ。現代の高齢者は、10~20年前の高齢者に比べて加齢に伴う身体的機能の衰えが5~10年遅れているといわれており、元気な高齢者が多いことを実感している人も少なくないだろう。
また、一般社団法人日本老年医学会が2017年に発表した「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ報告書」によれば、75歳未満の高齢者は活動的で「高齢者として扱われること」を不快に感じているというのだ。
60歳以上の労働意欲が高いことも覚えておきたい。内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によると、「いつまで収入を伴う仕事をしたいか」という質問に対し、60歳以上の男女のうち42%が「働けるうちはいつまでも働きたい」と答えている。反対に「仕事をしたいと思わない」と答えたのはわずか1.8%だった。
労働力人口における65歳以上の割合も右肩上がりに増加を続けている。同調査では、2007年には8.2%だった65歳以上の労働者の割合が、2017年には12.2%にまで上昇したとしている。
このように、健康な高齢者が増え、65歳を過ぎても働ける人・働きたい人は増加している。60歳以降で定年を迎え退職するという従来の日本型の雇用システムでは、労働者のニーズに応えきれないのが現状だ。もちろん、いつまでも活躍したいと願う個人は、年齢を重ねても重用されるようにスキルを磨き続けていく必要があるだろう。