年齢を重ねても活躍できる人材の育成と確保が必要

 活力あるシニア世代に活躍の場を提供する企業も増えてきている。人材派遣・職業紹介を行うユメニティは、特定の分野において秀でた技能や技術、知識を持つ高齢者をプロシニアと呼び、豊富な経験を持つ人材として企業に送り込んでいる。

 企業側も、優秀なシニアの登場を待つのではなく、自社でプラチナキャリアと呼ばれるような人材を育成することを考えねばならない。プロフェッショナル人材を自社で確保できるよう育成に努めることが、企業戦略においても重要な位置を占めてくると考えられる。

 このように優秀な人材を育てるために、企業はどのような取り組みを行うべきなのだろうか。ここでは、前述の「プラチナキャリア・アワード」を受賞した企業から、とくにシニアの活躍に力を入れている企業をピックアップし、人材育成への取り組みを紹介する。

●SCSKの取り組み
 プラチナキャリア・アワードの最優秀賞を獲得した、ITソリューションを開発・提供するSCSK。同社はさまざまなサステナビリティ活動をしており、その一環として独自の働き方改革を行い、人材育成にも努めている。

 まずは同賞を受賞したポイントの一つである、SCSKの先進的な人材育成の方法に着目したい。全社員に「継続的な学びと成長の機会」を提供する枠組みとして、「SCSK i-University」という制度を設け社員の学びを支援している。

 この制度は、全350種類の豊富な研修で社員のキャリア開発、リーダーシップ開発、専門能力開発、ビジネス基礎能力開発を後押しする。

 加えて、同社はジョブチャレンジ制度(社内公募制度)やFA制度も導入しているが、これは60歳以上の社員でも利用できる。入社時から手厚い研修で社員のキャリア構築を支援し、高年齢の社員にも活躍の場を創出しているSCSKの取り組みは、多くの企業の手本となるところだろう。

●ファンケルの取り組み
 プラチナキャリア・アワードにて東洋経済賞を受賞したファンケルは、シニアの活躍を応援することを目的として、2017年より「アクティブシニア社員」という新雇用区分を設けた。

 これは労働意欲が高い社員を65歳以降に再雇用する制度で、嘱託社員、契約社員、パート社員等区分にかかわらず全社員が対象となっている。

 同社の正社員としての定年は60歳と定められているものの、アクティブシニア社員には定年年齢がなく、本人に働く意欲があればいつまでも働き続けられるという。

 アクティブシニア社員制度を導入した背景には、健康かつ高いスキルを持った65歳以上のシニアに働く場を提供するだけでなく、シニアが持つノウハウを若い世代に継承していく目的がある。

シニアの力で新たなイノベーション創出を

「個」の力が重視されるようになり、自由な働き方が広まり始めた日本。前述した「定年後も活躍をし続けたいという意欲を持つ」かつ「健康で多様なスキルを持つ」シニア世代は、これからの日本において貴重な労働力となっていくことは確かだ。オープンイノベーションに関する取り組みの場でも、プロフェッショナル人材として働くシニアは、イノベーションの創出に欠かせない存在となるだろう。

 またそうした人材を企業が育成していくことも必要になる。さまざまな企業が育てた優秀なシニアが共創の場に集うことで、これまでにない新しいイノベーションが生まれるのではないだろうか。