信託報酬は投資家が投信を保有している間、ずっと負担しなければならないコストです。老後資金の準備のための資産運用は10年、20年、30年と長期間にわたり、かつ収益を再投資して複利効果を期待します。一見小さな料率の違いでも、最終的には投資成果に大きな影響を及ぼすことが知られています。
アクティブ投信を再評価する動きも
「長期・分散・低コスト」を実践する個人投資家のあいだで人気を集めているインデックス投信ですが、その信託報酬も運用会社同士の競争が働いて低下傾向にあります。“インデックス投資家”にとって追い風であることは間違いありません。
インデックス投信が人気を集める一方で、アクティブ投信を再評価する見方もあります。景気拡大期はインデックス投信の運用成果が相対的に優勢ですが、景気減速局面では組入銘柄の選別などで超過収益をめざすアクティブ投信の方が上回ることが多かった、というのが過去の実績だからです。
運用コスト低減を単純に追求するのも“欲”
アクティブ投信のなかには、運用責任者のリーダーシップと明確な投資哲学を前面に打ち出して、ファンづくりを地道に続けている投信があります。小さな投資家セミナーを繰り返し開催するなどして、顔の見えるコミュニケーションで投資家との絆を強めているように見えます。
投資は始めることより続けることが難しいと、よくいわれます。景気減速局面や株価低迷期はとくにそうでしょう。たとえば、アクティブ投信の運用責任者とのコミュニケーションで、資産が減る怖さや孤独感などを少しでも払拭できるなら、相応の信託報酬を払うのも合理的と考えることができます。
投資の世界には「たい焼きの頭と尻尾はくれてやれ!」という有名な格言があります。欲張るな深追いするな、という意味ですが、運用コスト低減を単純に追求するのもその“欲”なのかもしれません。
つみたてNISAやiDeCoで投資を始めた方は本格的な株価低迷期を経験していない方が多いので、今後は投資を続けることの難しさに直面する可能性が否定できません。景況感や株式市場の不透明感が増しつつある現在は、“投資を続けるためのコスト”を考えてみるよい機会なのではないでしょうか。