投資信託の直接販売(直販)が今後じわじわと増えていきそうです。投信の直販とは、投信の運用会社が銀行や証券会社などの販売会社を通さずに個人投資家へ投信を直接販売すること。当然のことながら、販売会社へ支払う販売手数料(交付目論見書では「購入時手数料」)がなくなる、つまりノーロードになることが多くなります。

 2015年から直販を行ってきた三井住友アセットマネジメントは、従来のバランス型とインデックス型に加えて日本株式のアクティブ型投信を新規設定して直販ラインナップに加えました。三菱UFJ国際投信もインデックス型を中心に直接販売を始めるという報道があります。

 投資家にとっては良い流れのようですが実際どうなのでしょうか。

尻つぼみになった大手運用会社中心の通信販売

 投信の直販は、いまに始まった流れではありません。1990年代後半にも大手運用会社を中心に行われていました。当時の直販はインターネットではなく、電話や郵送による通信販売が中心でした。インターネット経由での直接販売になったのは、ここ10年くらいのことです。

 大手運用会社による投信の直販(通販)はすぐに尻つぼみになってしまいました。その理由をひとことで言うと「投信市場の未成熟さ」というところでしょうか。当時の投信は証券会社がプッシュして初めて売れる商品。個人が自ら投資を学習するための情報も購入手段も整備されておらず、商品の種類も限定的だったからです。

 そんななかで、当時から少しずつ直販で残高を伸ばしてきたのが、金融機関系列ではない“独立系”運用会社の投信です。1999年に設定された「さわかみファンド」(さわかみ投信)が独立系運用会社による最初の直販投信。以降、セゾン投信(2007年)、レオス・キャピタルワークス(2008年)、コモンズ投信(2009年)、鎌倉投信(2010年)などが続きました。各社は現在も直販を続けています(一部の投信は金融機関でも取り扱いがある)。

独自色を打ち出し自社のファンを作った

 独立系運用会社に直販が多いのは、止むに止まれぬ事情もあったと思われます。多くの投信運用会社は系列証券・銀行の子会社で、販売会社主導で投信が“製造”されていました。系列外や独立系運用会社の投信を取り扱うことは珍しく、扱ったとしても系列運用会社がカバーしていない投資対象を補完するケースが多かったように思います。

 プッシュ営業でしか投信が売れなかった時代、独立系運用会社はどのようにして資産残高を積み上げていったのでしょうか。独立系なりの独自色を強く打ち出して自社のファンを作ったのです。具体的には、(1)運用責任者もしくは代表が前面に立ち、(2)長期投資と自社の運用哲学を地道に説き、(3)資産形成層(現役サラリーマン層)へ定時定額購入(積立投資)を啓蒙しました。

 しかし、残高拡大はそう簡単ではありません。2018年末の公募株式投信の残高において直販が占める割合は0.9%、約8000億円しかありません。いまのところ、独立系運用会社が小規模組織だから成り立つ販売形態といえるでしょう。

 ただ、独立系運用会社のこの取り組みは、投信市場に副産物をもたらしつつあります。個人投資家の投資リテラシーが向上し、長期・分散・低コストという認識が一部ではありますが広がったことです。アクティブ運用とパッシブ運用(インデックス投資)の違いや運用哲学の理解も進んだように思われます。つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)が浸透してきたのも、独立系運用会社による啓蒙活動の成果なのかもしれません。

「比較的低コスト」「一次情報」「一貫した運用哲学」

 ここで、直販のメリットとデメリットをまとめてみます。メリットとして挙げられるのは以下の3つです。(1)販売手数料(購入時手数料)がかからない商品が多い、(2)運用会社から直接、情報を得ることができる、(3)運用会社ごとに運用哲学が一貫しているケースが多い。

(1)に関しては、最近は証券会社経由でもノーロード投信が増えてきたので、相対的に強みは薄まってきているかもしれません。(2)に関しては、直販を行っている運用会社はネット上での情報提供だけでなく、投資家向けのリアルセミナーや勉強会をとても活発に行っています。運用会社の人に直接会って一次情報を得ることができるのは大きなメリットといえそうです。

(3)は独立系運用会社に顕著な特徴といえます。運用している投信が複数あって投資対象などが違っていても、根本の投資哲学は共通だったりします。投資哲学で商品を選びたい人にはうれしいポイントといえるでしょう。

資産規模が小さく継続性に不安がある

 一方、デメリットとして挙げられるのは以下の3つです。(1)運用会社ごとに口座開設が必要になる、(2)一部を除いて資産残高が少ない投信があり、投資継続性に不安を感じることもある、(3)商品の数や種類が少ない。

(1)は直販である以上、面倒ですが仕方ありません。(2)に関しては、実際に資産残高が少なくて運用会社3社が合併したことがあります(投信そのものは現在も運用を継続しています)。

 ちなみに、投信の運用会社が万が一破綻しても、投資した資金は額にかかわらず制度的に守られるようになっています。資金(信託財産)は運用会社とは別の信託銀行に保管されているので、直接的な影響はありません。運用していた投資信託は他の運用会社に引き継がれるか、繰上償還されることになります。

(3)は商品選びの選択肢が限られるということです。今後の拡大に期待するしかありません。

効果は運用実績だけではない

 こうして見ると、投信の直販は投資についてある程度勉強した、自分なりの選択眼をもった人に向いたサービスのようです。

 実際の運用実績はどうなっているのでしょう。金融庁が2019年1月に公表した「販売会社における比較可能な共通KPIの傾向分析」によると、運用損益がプラスになっている顧客の割合が最も高い販売会社はコモンズ投信で、98%が運用益を出しています。以下、レオス・キャピタルワークス91%、セゾン投信85%と上位3位を直販メインの運用会社が占めています。

 このデータは2018年3月末時点のものなので、それ以後の運用実績で違いが出ているでしょうし、このデータだけで「直販だから運用実績が良い」とは判断できません。しかしながら、同分析では「上位3社にその要因をヒアリングしたところ、共通して積立投資の効果を強調している」と報告しています。

 独立系運用会社が中心となって地道に進めてきた投信直販ですが、その効果は運用実績だけでなく、投資家教育に及ぼす影響が大きかったといえそうです。今後は大手金融機関系運用会社の本格参入によって、直販投信の数や種類も増えていくでしょう。「長期・分散・低コスト」に加えて、運用哲学をベースにその運用会社のファンになれるかどうか。この点で商品選びを行うのが一般的になる時代が来るかもしれません。

【訂正】記事初出時に、コモンズ投信の直販投信の開始が「2007年」とありましたが正しくは「2009年」でした。本文は修正済みです。(2019年2月28日)