独自色を打ち出し自社のファンを作った
独立系運用会社に直販が多いのは、止むに止まれぬ事情もあったと思われます。多くの投信運用会社は系列証券・銀行の子会社で、販売会社主導で投信が“製造”されていました。系列外や独立系運用会社の投信を取り扱うことは珍しく、扱ったとしても系列運用会社がカバーしていない投資対象を補完するケースが多かったように思います。
プッシュ営業でしか投信が売れなかった時代、独立系運用会社はどのようにして資産残高を積み上げていったのでしょうか。独立系なりの独自色を強く打ち出して自社のファンを作ったのです。具体的には、(1)運用責任者もしくは代表が前面に立ち、(2)長期投資と自社の運用哲学を地道に説き、(3)資産形成層(現役サラリーマン層)へ定時定額購入(積立投資)を啓蒙しました。
しかし、残高拡大はそう簡単ではありません。2018年末の公募株式投信の残高において直販が占める割合は0.9%、約8000億円しかありません。いまのところ、独立系運用会社が小規模組織だから成り立つ販売形態といえるでしょう。
ただ、独立系運用会社のこの取り組みは、投信市場に副産物をもたらしつつあります。個人投資家の投資リテラシーが向上し、長期・分散・低コストという認識が一部ではありますが広がったことです。アクティブ運用とパッシブ運用(インデックス投資)の違いや運用哲学の理解も進んだように思われます。つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)が浸透してきたのも、独立系運用会社による啓蒙活動の成果なのかもしれません。
「比較的低コスト」「一次情報」「一貫した運用哲学」
ここで、直販のメリットとデメリットをまとめてみます。メリットとして挙げられるのは以下の3つです。(1)販売手数料(購入時手数料)がかからない商品が多い、(2)運用会社から直接、情報を得ることができる、(3)運用会社ごとに運用哲学が一貫しているケースが多い。
(1)に関しては、最近は証券会社経由でもノーロード投信が増えてきたので、相対的に強みは薄まってきているかもしれません。(2)に関しては、直販を行っている運用会社はネット上での情報提供だけでなく、投資家向けのリアルセミナーや勉強会をとても活発に行っています。運用会社の人に直接会って一次情報を得ることができるのは大きなメリットといえそうです。