資産運用に関する書籍などで「コア・サテライト戦略」という言葉を見かけることがあります。投資手法のひとつで、安定運用のコア(中核)部分と、多少のリスクを取って高いリターンを狙うサテライト(衛星)部分を分けて管理することです。

 資産全体ではリスクの軽減と安定的なリターンを期待するものの、収益の底上げを図るという考え方です。年金基金などの機関投資家の間では標準的な戦略として知られているのですが、この考え方を個人の資産運用に活用することはできないものでしょうか。

コアをインデックス投信、サテライトをアクティブ投信で

 コア・サテライト戦略のコア資産としては、相対的に低コストかつ幅広い市場に投資する金融商品が適していると考えられています。具体的には国内外の株式に投資するインデックス投信が該当します。

 一方のサテライト資産には、相対的に高リスクな商品が該当します。運用担当者が自分の投資判断をベースに機動的に銘柄選択を行うアクティブ型の株式投信が代表的。ほかにも、信用リスクと為替リスクの両方を取る新興国の債券投信や地域やテーマに特化した海外株式投信などが考えられるでしょう。

 つまり、インデックス投信(コア資産)で幅広く分散投資を行って市場平均並みのリターンを狙いつつ、アクティブ投信(サテライト資産)でさらなるリターン向上を追求する仕組みです。たとえば「コア資産とサテライト資産を半分ずつ」「コア資産とサテライト資産で8:2」など、自分のリスク許容度を踏まえた資産ポートフォリオを構成しやすいというわけです。

 確かにわかりやすいかもしれませんね。さらに、コア・サテライト戦略なら最も少なくて2本の投信(コア1本+サテライト1本)でポートフォリオを構築することができます。これも大きなメリットです。特に初心者はシンプルに最低本数で投資をスタートさせ、必要なら後から少しずつ増やしていく方が投資のハードルが低くなるのではないでしょうか。

アクティブ投信は市場平均に勝てない?

 コア資産として国内株式のインデックス投信を少額ずつ積立投資しながら、サテライト資産として国内外株式のアクティブ投信や個別株を無理のない範囲で加えていく――。これがコア・サテライト戦略の基本形のひとつといえます。

 しかし実際は、そう簡単にはいかないようです。その理由として指摘されているのが、アクティブ投信のパフォーマンスが市場平均(言い換えるとインデックス投信)に勝つことが少ないという点です。

 たとえば、2018年は投信運用にとって厳しい1年でした。投信評価のモーニングスターによると、資産カテゴリー別の年初来リターン(2018年12月21日時点)は、国内REIT型が8.41%で2017年の最下位から一転してトップとなった一方、前年トップの国内株式型が-18.09%で最下位となりました。

 格付け投資情報センターによると、2017年の国内株式アクティブ型投信の運用実績は550本中、日経平均株価(+19%)を上回ったのが約9割の504本。対TOPIX(配当込みで+22%)でも8割の440本が上回っていました。

 2018年は通常運行に戻ったかのようなパフォーマンスで、モーニングスターも「2018年の国内ファンドのパフォーマンスは、2017年と“ほぼ逆”となった」と指摘しています。

インデックス投信100%で十分という指摘も

 アクティブ投信は一般に、株価の上昇局面で買われやすい傾向がある一方、相場が下落局面になると下落率が市場平均を上回る傾向があります。2018年10月以降に大きく下落したのは記憶に新しいところでしょう。ある市場価格に連動するように設計されるインデックス投信は、当然のことながらパフォーマンスは市場平均並み。下落局面でもそれ以上には悪化しません。

 もちろん組み合わせによるのでしょうが、コア資産で安定的に資産形成を図っても、リスクを取ったサテライト資産のパフォーマンス下落がポートフォリオ全体の資産価値を大きく下げるようなら、コア・サテライト戦略は成功とはいえません。

 FP(ファイナンシャルプランナー)や識者のなかにも、コア・サテライト戦略不要論を唱える人がいます。サテライト資産として考えられている金融商品が比較的高コストであることから、金融機関の都合のいい理屈なのではないか、というのが主な指摘です。

 コア資産にインデックス投信をもつのは、(1)インデックス運用の手数料が安い、(2)アクティブ運用が平均的にはインデックス運用に勝つのが難しい、(3)複数のアクティブ運用を組み合わせるとインデックス運用に似てくる現象がある――などの理由によります。だったら100%インデックス投信でよいだろうというわけです。

ずっと合理性を追求できるか

 長い老後に備えるための資産運用でいま、なすべきことは何でしょうか。極めて合理的にリスクと対峙することです。海外を含めた株式投信の過去の実績では、長期間の運用なら年率平均5~7%くらいのリターンが期待できることはわかっています。しかし、いついくらの収益を得ることができるのかは、明確にはわかりません。その現状のなかでいまできることは、できる限り低コストで的確な市場へ参加することでしょう。

 コア・サテライト戦略そのものが非合理というわけではありません。コア資産もサテライト資産もインデックス投信やETF(上場投資信託)のようなパッシブ運用の商品であれば、より合理的になり実践を検討する価値が高まるということです。

 ここでひとつ自問していただきたいことがあります。「自分は合理性をとことん追求した資産運用を20年、30年と続けることができるだろうか」ということです。長い運用期間中には、資産価値が上がったり下がったり、自分の生活環境にも変化が生まれるでしょう。そのような長い時間のなかで、いつも合理的かつ冷静な判断を下し続けることができるでしょうか。

飽きずに長期投資を続けるために

 筆者自身は難しいと考えています。資産運用にもどこかに小さな楽しみ、面白さを見出さないと長く続けることはできそうにありません。属人的な性格の問題なのかもしれませんが。

 コア・サテライト戦略などという大げさな考えではなく、インデックス投信やETF(上場投資信託)による資産運用を続けながら、ごく少額で特徴的な商品にも投資する。それが運用の楽しみになって長期投資に“飽きない”効果が期待できるなら、それはそれでアリなのではないかと考えています。

 ストレス学説を提唱した生理学者のハンス・セリエ博士は「ストレスは人生のスパイスである」と述べました。資産運用を楽しくするスパイスとしてアクティブ投信を活用するのも、よいかもしれませんね。