写真提供:Taidgh Barron/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

 インフレや長期金利の上昇、円安など、金融にまつわる話題に事欠かない状況が続いている。今後の日本の金融の未来はどうなっていくのか。その疑問に、金融業界での実務経験が長く、金融や銀行に関連する著書を多数執筆してきた東洋大学の野崎浩成教授が答える。本稿では、同氏が日本の金融の未来について幅広く語った講演の中から、地域金融機関と、メガバンクなどの主要金融機関について解説した部分の内容を要約して紹介する。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第9回 金融イノベーションフォーラム」における「基調講演:明るい銀行と経済の明日に向けて/東洋大学教授 野崎浩成氏」(2025年8月に配信)を基に制作しています。

日本の金融のこれまでの変遷

 講演では冒頭に、金融業界にまつわる時代の変遷と、それに伴う銀行グループの過去の戦略についての解説があった。野崎氏は「私の経験上、金融システムにはおおむね15年サイクルで大きな変革が発生している」と分析する。

 まず振り返ったのは1988年からの15年間だ。この間は、金融機関にとって、国際基準の強制適用に伴う過去最大の困難の時期であった。平成金融危機の時代である。バーゼル合意に基づく自己資本比率規制が導入されたほか、自己査定制度の導入もインパクトが大きかった。規制強化の影響で多くの金融機関に損失処理が発生し、財務基盤に相当の毀損(きそん)が生じた。

 2003年以降、国内の金融機関においては、過去の財務基盤強化が功を奏することとなった。結果的に、2008年に起こったリーマン・ショックを、欧米の金融機関と比べて相対的に軽傷で乗り越えられたのだ。特にメガバンクに関しては、2018年頃までの間に、海外においてさまざまな成長機会を獲得した。

 2018年以降を見ると、スマホの普及やフィンテックの台頭とともに、新たな変化が起こっている。ネット証券の急激な台頭などもあり、家計・消費者の行動変容が顕在化した。伝統的な金融機関であるメガバンクや地方銀行は大きな影響を受けており、コーポレートバンキングの構造も変わりつつある。

 こうした過去の変遷を踏まえた上で、地域金融機関と主要金融機関のこれからについての解説があった。