今後の価格下落要因にも注意

「海外投資家」は主に海外の機関投資家のことを指します。世界中の市場を見渡して小さな投資妙味も逃さない彼らにとってJリートの高いシャープレシオは絶好の買い物に見えたのかもしれません。日本の不動産市場の成長性に着目したというよりは、計量的かつ自動的に投資した可能性が十分に考えられます。

 逆に考えると、海外の投資家がJリートの投資妙味が薄れたと考えた場合には一気に投資資金を引き揚げる可能性もあるわけです。その際はJリート価格の下落要因になります。

 日銀がJリートを大量購入していることは周知の事実です。金融緩和政策の一環で2010年から購入を始め、2019年3月末現在の累計買い入れ額は5148億円に上っています。リートの同時期の時価総額は14.2兆円ですから3.6%を占めることになります。今後の金融政策(いわゆる出口政策)で買い入れを止めるようなことがあれば、これも価格下落要因になり得ます。

 個人の資産運用としてJリートを投資対象と考えた場合、不動産市場の見通しだけでなく、海外の機関投資家や日銀(国)の動向や政策も気にしておく必要があるわけです。株式や債券に投資する投信も同様の性格を持ち合わせていますが、Jリートはそれらよりも強い影響を受けることは覚えておきたいところです。

“上げ相場”の後追いは怪我の元

 2001年に発足したJリートの市場拡大によって、個人でも実質的に不動産に投資できるようになりました。大きな収益を狙うお金は株式へ、資産を守るお金は債券へ、そして分配金による安定収益を狙うお金は不動産(Jリート)へ、とバランスよい資産配分が可能になったのです。いまやJリートは長期の資産運用にとって欠かせない投資先になったといえるでしょう。

 このようにJリートの運用実績は最近好調なのですが、具体的にどうすればよいのでしょうか。隣の芝生が青く見えてしまったら、自分の芝生が青くなるまでずっと気になってしまうものです。Jリートに投資していなかった方は、新しく投資対象に加えてみるよいチャンスかもしれません。また、すでにJリートに投資している方が、投資配分を増やすのは好手でしょうか。ここでは、いちどゆっくり考えることをお勧めします。“上げ相場”の後追いは怪我の元です。

 たとえば、株式・債券・Jリートに資産を分けて投資するバランス型投信では、あらかじめ決められた割合で投資を続ける「比率固定型」の方が、機動的に割合を変更する「比率変動型」よりも運用実績がよいというデータも出ています。

 Jリートへの投資は、最大でも投資資産全体の1~2割程度に収めることを基本と考えましょう。それでも気になるようなら、金融機関の専門家やFP(フィナンシャルプランナー)などに相談して自分が納得できる資産配分を見つけましょう。