「株主優待制度」(株主優待)が依然として人気です。株主優待とは、企業が一定以上の株式を保有する株主に対して、自社商品やサービス割引券などを提供する一種の利益還元策。個人投資家にできるだけ多く、かつ長く自社の株式を保有してもらいたい企業側のねらいが、その根底にあります。保有する株式数の多い株主に対しては優待を手厚くするケースが一般的です。
日本の個人投資家は株主優待が好きな傾向があり、企業もそれに対応して株主優待制度を積極的に導入しています。野村インベスター・リレーションズの調査によると、株主優待を導入している企業は2019年1月末時点で1508社と過去最多。上場会社全体の4割近くを占めることになります。今回は株主優待を個人の資産形成にどう活用したらよいのか、改めて考えてみます。
商品・サービスの価値判断や「優待利回り」のメリット
株主優待で投資家が受け取ることができる主な商品・サービスは、当該企業がビジネスとして提供しているものがほとんどです。資産形成における投資先を選ぶ視点で考えると、受け取った商品・サービスを実際に試してみることで、投資価値を判断する材料になります。店舗や施設に足を運ぶきっかけにもなるので、味やサービス、雰囲気、訪問者の利用状況などを体感してその企業の魅力や課題を確認できるメリットがありそうです。
さらに、株式の値上がり益や配当に次ぐ、第3の収益源としての意味があります。株主優待の商品・サービスを金額に換算して、当該企業の株式を1年間保有した場合の利回りを算出した「優待利回り」という考え方も。この優待利回りに配当利回りを加えて、「○%以上なら買い(保有)」というような自分なりの判断基準をもつ投資家は少なくありません。
ここで注意したいのは、株価と利回りの関係です。いわゆる優待利回りは配当利回りと同様、株価が下がると利回りが上がる関係にあります。優待+配当利回りが上がっていても、株価が下がっていれば資産が拡大しているとは限りません。