さて、前回は教育改革の良き先輩としてエストニアを紹介した。しかし、何と言っても本丸はシリコンバレーである。

 通常「起業家教育」というと大学院、それも社会人を相手にしたMBAクラスが念頭に浮かぶ。しかし、徐々に対象が若い学生に移ってきている。

 東京大学では、これまで本郷キャンパスでだけ実施していた「アントレプレナー道場」を教養学部の駒場キャンパスでも始めたところ、参加学生数が一気に500人になったと聞いた。また、九州大学では学部学生も含めた全学を対象にした「ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター(QREC)」を実施してきている。最近では起業部も設立され、賑わっていると聞いている。それだけ若者を引き付ける魅力がベンチャーにはある。

 しかし、「大学生になってからでは手遅れ!」と叫んだ人がいる。これは20年間シリコンバレーで起業家として活躍し、『シリコンバレー流起業入門』などの著書もある曽我弘(そが・ひろむ)氏の、ある会合での冒頭発言である。

 思うに、外国でどのような高校教育をしているのか、ましてや起業家教育という特定分野でどのように教えているのかを知る機会はほとんどない。大学や大学院であれば、留学すればその国の学生と机を並べることができるが、高校段階での留学は多くはない。海外赴任して子供を現地校に入れれば、子供を通して多くの情報が得られるが、現地校に入れると宿題のサポートで親が疲れてしまうし、親自身もPTAの連絡が現地の言葉で来るので大変になると聞いている。

 かく言う我が家も、子供が小中学校のときはパリや台北の日本人学校に通わせ、高校になると、当時台湾に赴任していたのであるが、シンガポールにある日本の高校に寮住まいをさせた。これでは、その国の中等教育に直には触れることができない。

シリコンバレー流の高校教育

 ところが、曽我氏はシリコンバレーの高校でどのように起業家教育をしているのかを突き止めたのである。それは、曽我氏が立ち上げた「GTE(Global, Technology and Entrepreneur)」というプログラムで、シリコンバレーの現役のハーカー高校の起業家教育専門の先生に和歌山に来てもらい、英語で、まさにシリコンバレー流の短期サマープログラムを日本の高校生に対して実施してもらうというものである。

 曽我氏も特にシリコンバレーの高校にツテがあるわけでもなく、インターネットで募集したところ、1人の先生が応じてきてくれたということである。私どもVECは考えていることが全く一致したので、このGTEプログラムを3年前に開始したときから支援してきている。