小さな「知恵の塊」は原点回帰から生まれる

スモールカーの現在と進化の道筋(後篇)
2012.12.28(金) 両角 岳彦 follow フォロー help フォロー中
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4人の大人がちゃんと収まる空間としてのフォルクスワーゲン「up!」。VWの地元のプロチーム(ブンデスリーグ)、ヴォルフスブルクのサッカー選手たちとともに。左から3人目は長谷部選手。(写真提供:Volkswagen AG)
up!の側面図と前面図に描かれている人体モデルはアメリカ男性の体型の95%をカバーすると規定されている「AM95」サイズのはずで、そうだとすれば身長187センチメートルの大柄な身体である。それが4人、きちんと座った周囲を包み込み、かつ「住み心地良い」空間を形作る。走行機能要素は現代の技術が許すかぎり凝縮して組み込む。これがスモールカーパッケージングの基本。(図版提供:Volkswagen AG)
up!の車体骨格。パワーパッケージを収めるエンジンルームがとても短いことがよく分かる。車体に使われている素材を示す円グラフ(重量ベース)が示すのは右上から時計回りに、通常の軟鋼、高張力鋼板、超高張力鋼板、改良超高張力鋼板、熱間成形を行う超高張力鋼板。日本のスモールカーでこうした最新素材を最新工法で成形して組み立てた骨格はまだない。骨格各部の断面の「深さ」は、薄板を使っても十分な剛性を得るための基本となる設計である。(図版提供:Volkswagen AG)
ホンダ「フィット」の基本レイアウト。その特徴は常識的には後席下部の床下に収める燃料タンクを前席直下に置いたことにある。この発想によってリアシート座面を上にたためば、天地いっぱいの空間が生まれる形になった。背が高く身体を起こして座る空間では座面下の空間が大きく、それを後席側で活用しようというアイデアである。全ての状況において「正解」というわけではないが。図は2代目フィットのものだが、初代が成功を収めたのでその基本構成は変えずに継承している。(図版提供:本田技研工業)
初代ヴィッツの室内レイアウトを示す透視写真。トヨタのスモールカーを当時の世界基準の最先端にまで進化させるべく、グループ全体から有能な技術者を集めた特別チームを組み、まずパッケージングレイアウトから徹底的に考え、組み立てたクルマだった。インスツルメントパネル、シート、さらにはリアウィンドウワイパーまで、新たな設計と製法を開拓し、ここから始める大量生産によってコストを回収するという取り組みも行った。(写真提供:トヨタ自動車)
フォルクスワーゲン(タイプI:いわゆる「ビートル」)の「パッケージングデザイン」を示す横断面画。1930年代半ばにこれだけ稠密な空間設計を実現していたのである。人が座り、移動するための空間がまず中央にあり、その周囲に無駄なく走行機能要素を配置していった結果のリアエンジンレイアウトであることがよく分かる。しかも車室床面中央に盛り上がった小さなトンネルが、車体骨格の「背骨」を形成する。見ていて飽きない、「絵画」のような美しさがある。もちろん今日の社会的規範、特に衝突安全性の要件に対しては、こうしたミニマムデザインでは通用しない。(図版提供:Volkswagen AG)
こちらは「ザ・オリジン」、英国の自動車産業が1950年代に生み出し、その後のスモールカーのあり方を決定づけたBMC(オースチン、モーリスなどの合同企業体)ミニを車体中心面で切断して、内部レイアウトを見られるようにした実車カットモデル。これまた「居住空間ありき」から始まるきわめて稠密な設計が見ただけで伝わってくる。ホイール径10インチという当時も今も例を見ない小径タイヤに至るまで、機能要素の全てを徹底的に考え尽くしている。これも今日の衝突要件などには適合しない。それらを満たしつつ、同じだけの稠密さで創造的な「デザイン」を描けば、そこに次世代をリードするスモールカー像が生まれる。(写真提供:British Motors Corporation)

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