多収量イネは「第2の緑の革命」を実現できるか

日本のコメが世界の食糧危機を救う(後篇)

2011.05.27(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 あるイネから、コメの収穫量の増加につながる遺伝子が見つかった。名古屋大学の芦苅基行教授は2005年に、コメの粒数の増加に関わる遺伝子を発見。さらに2010年には、穂の枝数の増加に関わる遺伝子を発見した。

 次々と発見した遺伝子を、今度は主要な品種のイネに導入する時が来た。日本での主要な品種と言えば「コシヒカリ」。世界的に有名な品種と言えば「日本晴(にほんばれ)」だ。それぞれに対してこれらの遺伝子を導入する段階に進んでいる。

 芦苅教授が目指すのは、開発したイネによって世界の食糧危機を救うこと。実現すれば、「第2の緑の革命」と呼ばれるようになるかもしれない。

 前篇で紹介したとおり、イネに生る果実「コメ」の収量を増やすには、「粒の数を増やす」「粒が生る穂の枝の数を増やす」「粒そのものの体積を増やす」などの手法が主に考えられる。

 名古屋大学生物機能開発利用研究センターの芦苅基行教授は、第1の手法と第2の手法を実現するための遺伝子を発見し、発表してきた。

 まず、「Gn1」と呼ばれるようになった遺伝子を2005年に「ハバタキ」というイネの品種から発見した。穂につくコメの粒の数そのものを増やす鍵を握る遺伝子である。

 また、「WFP」と名付けられるようになった遺伝子を2010年に同センターで保管してきたイネ「ST-12」から発見した。こちらは穂の枝分かれの数を増やす鍵を握っている。

 もう1つ、コメの粒そのものを巨大化させるという手法も重要だ。「まだ未発表の段階ですが」と言いながら、芦苅教授は研究中のコメの写真を見せてくれた。日本晴のコメの粒の写真の横に、直径にして1.5倍はあろうかという大きなコメの粒が並んでいる。

 「ある遺伝子を日本晴に入れると、このように大きくなります。種子の数を増やす、穂の枝分かれの数を増やす、そして種子を巨大化させる。これらすべての要素から、収量増につなげていきたい」

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


農業の進む道

就業者の高齢化と減少、国際競争力の欠如など、様々な問題を抱える日本の農業。農業改革が遅々として進まないのはなぜか。農業を覆う問題の構造を明らかにし、あらゆる方面から日本の農業を活性化する方策を探る。