前回に引き続いて、「日本の自動車メーカーと自動車産業が『元気』を取り戻す道筋は?」という観察分析のお話。 それが見えれば、そこに向かう兆候も早いタイミングで読み取れるはずだ。まずは「トヨタの場合」へと話を進める。
本論に進む前に、触れておきたい話題がある。 福島第一原発事故問題、である。
このコラムでももう2カ月も前に「何が起こり、進んでいると考えられるか」を整理してみた。それ以来、これほどの時間が過ぎ、様々な状況やデータが明らかになったにもかかわらず、メガメディアは「1、2、3号機とも炉心が『メルトダウン』している」「圧力容器の底に穴が開いている」(いずれも現段階では「と見られる」と報じるべきである)などという、今さらの情報を「重大なニュース」として声高に語ることを繰り返している。
なぜ「今さら」なのか。
以前のコラムですでに指摘したように、津波に襲われて「ステーションブラックアウト(全電源喪失)」に陥ったことで、緊急停止(スクラム)に続いて行われるべき水の循環による冷却ができなくなった。
核燃料は自らが出し続けている崩壊熱によって高温になり、それに接する冷却水が沸騰して高温・高圧の水蒸気が大量に発生、燃料棒の被覆材であるジルコニウム合金が腐食、劣化するという反応が急速に進む。
この燃料棒の「鞘」であるジルコニウム合金が、高温の水蒸気にさらされる中で腐食した時に、水素が発生する。そのガスが空気と混じって原子炉建屋を破壊する爆発を起こすほどの量になっていた。ということは、核燃料のペレットをぎっしりと詰め込んで「燃料棒」としての形にしていた薄いジルコニウム合金の筒は、相当に傷んでしまっているはずである。
東京電力や原子力安全・保安院が現時点で公開しているプラントのデータでは空白になっているのだが、事故発生直後には「炉心(圧力容器内)の温度が摂氏1000度を超えた」という情報が出ていた(原子炉の状況をより確度高く「推定」するためにも、この3月11~12日の刻々のデータ、特に炉心周辺温度はぜひ公開すべきだ)。
つまり、それ以上の温度になった核燃料ペレットが、鞘に保持されなくなって、圧力容器の底に向かって落ちてゆくという可能性は、十分にリアルなものとして「想定」できたはずだ。
圧力容器の底部にはもともと「穴」が開いている
ここでもう1つのポイント。今回の事故に直面した核分裂熱発電システムは「沸騰水型」である。この形態の場合、核分裂反応をコントロールするための「制御棒」は、炉心に対して下から挿入される構造になっている。