日本ではテストの点数に一喜一憂するのは自然のことだと思われているが…(写真:takasu/Shutterstock.com)

アイスランドやスペインでは週休3日が当たり前、ドイツのほとんどのお店は土日休み——。日本の常識とは全く異なる世界の「シン・スタンダード」を満載し、私たちの凝り固まった価値観を問うているのが『シン・スタンダード』(谷口たかひさ著、サンマーク出版)だ。数々の「世界の常識」と「日本の常識」を比較した上で、ものの見方の選択肢を増やすことの大切さを痛感させる一冊だ。

(東野 望:フリーライター)

職業に関する日本人の「思い込み」

 ある時、父と息子がドライブ中に事故に遭い、病院に運ばれた。するとその病院の医師が運び込まれた息子の方を見て、「彼は私の息子だ」と言ったのだという。なぜ医師は患者の男の子を息子だと言ったのだろうか。

 答えは簡単、「医師がその男の子の母親だったから」。

 しかし、多くの日本人がその答えにたどり着かないという。一方で、ジェンダーギャップの少ない北欧では同じクイズを出しても簡単すぎてクイズが成立しないらしい。

 これは本書で示している「世界の常識」と「日本の常識」を比べた例だ。かくいう私も「医師=母親」という考えに至らず、自身の凝り固まった価値観を思い知らされた。

医療現場では、医師を含め多数の女性が働いているはずだが(写真:nut_foto/Shutterstock.com)

 著者は人気インスタグラマーの谷口たかひさ氏。イギリスの大学を卒業したあと、現在は気候危機や世界情勢について世界各地で講演し、国連総会でスピーチしたこともあるという谷口氏はこう語る。

海外の文化や常識、または政治や環境問題への取り組みを知ってもらうことで、きっと自分が大事にしたい「価値観」に対する解像度は自ずと上がっていくはずだ。

成績をつけないと逆に学力は上がる?

 価値観といえば、子どもの頃から「テストでいい点を取りなさい」と成績の良し悪しで評価されてきた人は多いだろう。しかし、デンマークではテストや通知表などで子どもに点数をつけることが禁止されている。そんなことをすれば競争意識がなくなり、皆勉強しなくなるのではないかと思うのだが、どうやら反対だという。

そんな発言を一刀両断するように、国際学力調査でもデンマークは世界トップクラスという結果が出ている。

 さらに、点数をつけないことは昨今日本で問題になっている「先生の働きすぎ」の解消にも一役買うのではないだろうか。これまで「当たり前」だと思っていたことをやめれば先生の負担は減り、過剰に成績を気にする子どもが減るかもしれない。