「90歳になってもバイトを続けたい」

 彼女は翌土曜日に行われるひいきのチームのアウェーゲームに合わせて札幌に出かける予定だった。日曜日には小樽まで足を延ばして豪遊しようと計画していたが、軍資金が振り込まれず、食事代も払えないという窮地に追い込まれていたのだ。

 最終的にはご主人に頭を下げて遠征費用を借りることで事なきを得たが、「お前の金銭感覚はおかしい」と罵倒されて大げんかになったらしい。それでも彼女のライフスタイルが変わることはなく、悪びれる様子もなく「90歳になってもバイトを続けたい」と話す。

 もう一人の50代女性は、都心の敷地面積200坪の実家に暮らすシングルのお嬢様だ。とはいえ、勤務先の確定拠出年金(DC)は「1円たりとも減らしたくない」と元本確保型商品で運用し、服はもっぱらファストファッションと暮らしぶりは堅実そうに見える。

 その彼女が常々「老後が心配」と口にするのを不思議に思っていたが、ある時一緒に出張に行く機会があり、謎が氷解した。当日宿泊したホテルのスーペリアルームは40m2でまずまずの広さがあったのだが、滞在中に一言、「こういう部屋で寝泊まりするのはきつい」と漏らしたのだ。

 物心ついた頃から実家住まいの彼女は、海外留学していた時代も含めて狭い家に暮らした経験がない。そのため、彼女いわく「住居に関しては“閉所恐怖症”の傾向があり」、できればずっと実家にいたいと考えている。しかし、都内の一等地にある実家は固定資産税や庭の手入れ費用、オール電化の電気代など結構な維持費がかかり、退職した後の家計運営に不安を覚えているとのことだった。