島根1区で出てきた「未来への不安」

 例えば、いま住んでいる借家にいつまでいられるのか。車の運転が不安で外に出られなくなった。いまのマンションに住んで30年が経つが、空き家が増え、修繕費が足りず、地震が不安だ。親戚がみな市部に引っ越してしまい、地域で頼れる人がいなくなった。一昨年まで夫婦で農地を管理できていたが、ご主人の病気とともに農作業ができなくなって収入が途絶した。子どもたちが独立してしまい、何年も一人で住んでいて、誰にも相談できない孤独を感じる──など。

 政治としての足元は「政治とカネ」であり、社会保障や日米関係、物価高、原発再稼働などなどいろんなトピックスはあるけれど、そういう話題とは違う目線で暮らしている国民からすると、ほとんどまるっと信任争いの一面はどうしてもあります。

 結局は政治・政策の細かいことは分からないけど、この政治家は信頼できるかというぼんやりとした、しかし確実かつ的確に政治家の人柄を判断して投票しようとする有権者の意向の塊だと気づかされるわけですよ。

 訴えている内容よりも真剣に訴えているかであり、自分の漠然とした不安を掴み取って、何かいいことがあるんじゃないか、未来は明るいんじゃないかと導いてくれる人を選ぼうという、もやっとした民意をどう理解するかなんかじゃないのかと思います。

 中には、かなり細かく政治のニュースを見ていて、カネや女の話を連発するいまの与党は許せないという人たちもたくさんいます。「自分たちは世帯年収400万なのに、裏金2000万とかいいと思いますか?」と喰ってかかってくる男性は少なくありません。

 ノーノー、私は政治家でも与党でもありません。ただ、分かるのは家庭でも職場でもままならない生活の矛先が政治や国家、社会に向かいがちな中、それでも歯を食いしばって日々を暮らしている国民のありようです。

 まあ、そりゃ怒るわな。国も、地域も、社会も、有権者個人個人も、うまくいってないんだもの。