「テクノブレイク」は嘘であると説明すると生徒たちから笑いが起きた(写真:おおたとしまさ)

 教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が、男子校で広がり始めた性教育とジェンダー教育の現場に迫る連載「ルポ・男子校の性教育」。今回は2024年、東大に100人の合格者を出し、全国2位となったことで注目を浴びた神奈川の聖光学院を訪ねた。そこでは宝島社のフェムテックプロジェクトの一環として、高1を対象に、性的多様性から、マスターベーション、予期せぬ妊娠、性感染症、性的同意、不同意性交罪までをカバーする性教育講座が行われていた。

(おおたとしまさ:教育ジャーナリスト)

 1学年の全員がちょうど収まるすり鉢状の小講堂に、聖光学院の高1の生徒全員が集まった。彼らが学校で「性」について学ぶのは、中1の保健体育以来のこと。そこへ「サッコ先生」の愛称で年間120〜160回もの性教育講座を行っている、産婦人科医の高橋幸子さんが元気よく登場する。

「性教育講座ってちょっと堅苦しい話かなと心配していたひともいるかもしれませんが、ライフスキル講座と言い換えることができます。生きていくうえで知っておいたほうがいい知識とか、マナーとか、コミュニケーション、そういったことをお話ししていきたいと思います」

 まず、「性」には3つの側面があることを説明する。「生殖の性」「快楽の性(コミュニケーションの性)」「暴力・搾取の性」だ。サッコ先生が「暴力・搾取の性」と言ったとき、どよめきが起きた。「どよめきが起こるの? そうなの?」と、少し動揺するサッコ先生。「10年以上やっていて、初めて……。あぁ!」。

 サッコ先生、気がついた。講義が行われたのは、大手芸能事務所が性犯罪についての記者会見を行って全国的な注目を浴びた数日後だったのである。

「男性も性の被害者になる。みなさんの身にも関係してきているってことかなって思いました。性についてオープンに話せるようになった表れかもしれませんね」

 次にスクリーンに「SRHR」という4文字が大きく表示される。「性と生殖に関する健康と権利(Sexual Reproductive Health & Rights)」の略称だ。快楽を得ること、子どもをもつかなど、性や生殖に関わる希望を叶える権利が個人やカップルの本人にあることを意味する。そのためにさまざまな選択肢にアクセスできる環境を社会として整えていかなければいけないことも含んでいる。

 ここまでが導入。90分間で、性的多様性、マスターベーション、交際の12段階、月経、緊急避妊薬、予期せぬ妊娠、コンドーム、包茎、性感染症、性的同意、性暴力、不同意性交罪など、幅広いテーマを網羅する。