ロシア軍のミサイル攻撃を受けたウクライナのザポリージャで、怪我をした女性を運ぶ救助隊員(4月5日、写真:ロイター/アフロ)

(文中敬称略)

 ロシア・ウクライナ紛争の戦局に関する報道が減っているのは、中東紛争の煽りで脇に追いやられたからだけではあるまい。

 戦線でのウクライナ側の劣勢と後退が目立ち始め、西側メディアにとって意気上がるような話題が乏しくなっていることも一因だろう。

 ウクライナ大統領、V.ゼレンスキーは依然として領土の完全奪還を断固主張している。だが、ここ1~2か月の主要な諸報道を拾い上げると、いずれもがその目標の現実味に暗い影を落としているかのようだ。

●昨年10月から現在に至るまで、ロシア軍は505平方キロのウクライナ領を奪取し、鳴り物入りで始まった昨年のウクライナ軍による反転攻勢の成果は、緩慢ながら帳消しにされつつある。

●米国からの援助に事欠くようになったことから、ウクライナ軍が撃てる砲弾の数はロシア軍のわずか6分の1にまで減り、この状況はさらに悪化すると軍総司令官自らが認める。

●ウクライナも西側も、5月から6月にかけてのロシア軍大攻勢を口にし始めている。その通りなら、ウクライナへの援助再開が間に合わなければ、2024年の戦況は同国政権にとって不幸なものになりかねない。

●米国防長官は、ウクライナが存亡の危機にあるとまで発言し、反ロシア宣伝省の役割を担ってきた英国防省も、次第にロシア軍の前進を認めざるを得なくなっている。

 その英国の軍人からも、今年中のウクライナ敗北を口に出す向きが出てくる始末だ。一部の西側首脳の発言は、以前の「ロシアをどう敗北させるか」から「ロシアにどう勝たせないか」へと変わってきている。

●ゼレンスキーの発言も、「このまま援助が復活しないならウクライナ軍の後退もやむなし」から「ウクライナは敗北する」へと、悲観色を増している。

 さらに、援助なら何でも、となり、これまで選好しなかった(無償ではなく)融資による援助でも構わないとまで言い出した。もはや背に腹は代えられない。

●ウクライナ政権内では軍総司令官の首のすげ替えに続いて、国家安全保障・国防会議書記、A.ダニロフ書記も先月になって辞任に追い込まれた。

 その理由が何であれ政府要職トップの相次ぐ交替が、政権内での不一致や綻びであることは否定できない。

●そして、大きくは報道されていないものの、敗色を意識してか、ウクライナ軍の士気もかなり低下してきている模様だ。

 世論調査では領土の完全回復を信じるウクライナ国民も5割を切るようになった。