イタリアにあるステランティスのセベル工場。イタリア政府とステランティスは、年70万台レベルまで低下した国内での自動車生産台数を100万台まで引き上げることで合意していたが……。イタリアにあるステランティスのセベル工場。イタリア政府とステランティスは、年70万台レベルまで低下した国内での自動車生産台数を100万台まで引き上げることで合意していたが……(写真:ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 2023年12月、中国が推進してきた「一帯一路」構想からイタリアが離脱したことは、日本でも大いに話題になった。当初イタリアは、一帯一路に参加することで中国からの投融資が増加することを見込んでいたが、結局は当てが外れた。メリットがないなら参加し続けても意味がないという判断から、イタリアはこの構想から離脱した。

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 そのイタリアが、中国企業の誘致に躍起となっているというパズルがある。具体的には、イタリア政府は世界最大の電気自動車(EV)メーカー大手である比亜迪(BYD)に接触し、イタリアでの現地生産を開始するように動いているというのである。それも、一帯一路からの離脱を決断したジョルジャ・メローニ首相による肝いりのようだ。

 アドルフォ・ウルソ企業相が2月末に議会の公聴会で発言したところによると、政府はBYD以外の中国系EVメーカー2社と米テスラにも接近しているようだ。

 一帯一路から離脱したにもかかわらず、イタリアは中国系EVメーカーを積極的に誘致しようとしている最大の理由は、自動車工業での雇用の維持にある。

 自動車工業はイタリアの基幹産業の一つであり、最大手のフィアットや、その傘下のアルファロメオなどは良く知られたブランドである。しかし、近年はグローバルな競争の激化で存在感を弱めており、フィアットは生き残りをかけて、2021年にフランスのグループPSAと合併して「ステランティス」となったことでも知られている。

 そのステランティスとイタリア政府は、2023年7月、年70万台レベルまで低下した国内での自動車生産台数を100万台まで引き上げることで合意していた。政府は雇用の維持につながると期待したが、一方のステランティスは生産の一部を新興国に移管する可能性を示唆。これに慌てたメローニ政権が、中国メーカーに接近したようだ。

 中国系EVメーカーの誘致に積極的となっているイタリアの姿勢は、EUと加盟国の間に相反する思惑が存在していること浮き彫りにするものだ。