絶対に分解されないことから「永遠の化学物質」と言われる「PFAS」に対する懸念が世界で広がっている。写真は米国での水質調査(写真:AP/アフロ)

人体に悪影響があるとされる化学物質「PFAS」に関するニュースが増えてきました。日本でもPFASによる土壌や水の汚染が各地で確認されています。絶対に分解されない性質を持っていることから、「永遠の化学物質」とも言われていますが、いったい、どのような物質なのでしょうか。どんな問題を引き起こしているのでしょうか。やさしく解説します。

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用途が広く世界中に広がる

 PFAS(ピーファス)とは有機フッ素化合物の総称です。水や油を弾き、熱に強い特性があります。このため、フライパンの表面加工、包装資材の表面加工、自動車部品などの製造工程、泡消火剤、さらには衣類や化粧品などにも利用されています。半導体の製造にも欠かせない物質です。用途が広く、安定性も高いため、産業の高度化に伴って世界中で使われるようになりました。

 環境省によると、PFASは世界中で1万種以上あるとされています。そのうち、代表的なものは、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS、ピーフォス)とペルフルオロオクタン酸(PFOA、ピーフォア)です。

 これらの有機フッ素化合物は化学工場などで使用された後、何らかの原因で施設外に漏れ、地下水や土壌に浸透したとみられます。ところが、PFASは自然界では分解されません。したがって、いったん環境中に放出されると、水や土壌の中で半ば永久的に残り続けます。生物が取り込めば体内に蓄積されます。

 しかも、近年の研究によって、PFASは健康にかなりの悪影響を及ぼすことも分かってきました。発がん性も疑われており、米国チームの研究によれば、精巣がん、腎臓がんなどに加え、潰瘍性大腸炎や甲状腺の病気になりやすいことも判明しています。

 そのため、世界保健機関(WHO)は2022年に飲料水の暫定的な水質ガイドラインを策定しました。さらに2023年にはWHOの専門組織である国際的ながんの研究機関がPFOAをリスクの最も高い「発がん性あり」のランクに引き上げました。また、米国は2023年にWHOよりも厳しい規制基準案を公表しています。

 日本政府は2020年、新たな水質管理基準として「PFOSとPFOAの合算値が1リットルあたり50ナノグラム以下」という暫定目標値を定めました(ナノは10億分の1)。この値を上回る水を摂取してもただちに健康を害するわけではありませんが、長期的に摂取を続けた場合は、健康被害が予想されるのです。また、PFOSとPFOAについては、原則、2021年までに国内での製造や輸入もできなくなりました。

 しかし、地下水や土壌に残留したPFASは分解されず、今もあちこちで漏出が確認されています。環境省や自治体が2021年度に全国1131カ所で実施した水質調査によると、東京都や神奈川県、大阪府など13都府県の合計81カ所で国の指針を超えるPFASが検出されました。「永遠の化学物質」は気づかぬうちに全国に広がっている可能性があるのです。