中国の胡錦涛国家主席(当時)と握手する創価学会の池田大作名誉会長(写真:共同通信)
  • 95歳で亡くなった創価学会・名誉会長の池田大作氏が戦後の日本政治に与えた影響は少なくない。
  • とりわけ、日本独自の平和外交路線が国内政治の文脈にとどまらず世界に広がった背景には、池田大作氏と創価学会の存在がある。
  • 充足しているはずの現代社会で生きる指針や心の拠り所をなくした人々が増える中、今後の宗教に求められる役割とは何か。

(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 11月15日、創価学会の名誉会長であった池田大作さんが95歳で亡くなられていたことが報じられました。

 一般には、池田大作さんの消息が明確には伝わっていない時期も長かったことから、ことを正面から受け止め切れない国民も多かったのではないかと思います。ご健在であることが当たり前すぎて、フリーレン状態になる予定なのかとすら思っておりました。

 キリスト教的な表現で恐縮ですが、池田大作さんの魂に平安があらんことを深くお祈り申し上げます。

 かくいう私も、大学で自治会をやって、カルト宗教の不法な偽装サークル対応などをやった後、社会人になってもしばらく身近な存在でもある創価学会には屈折した感覚を強く持っていました。ただ、世の中に出てみると、それまで異質な宗教の人たちと思っていた創価学会の人たちが、割と枢要なところで息づいていることを知ります。

 今回、総理の岸田文雄さんが池田大作さんのご逝去に臨んでコメントを出して、それに対して噛みついている人がネットでも多くおられました。

 宗教分離に関しては、憲法で認められた信仰の自由を基本として、宗教を信じる人たちが政治を志し政党を結成すること自体は何も禁止していません。政府が特定の宗教を弾圧したり、あるいは国費を用いて信仰を奨励したりすることを禁じているにすぎません。

 今回、政府の権力者である岸田さんが「みんなで創価学会を支持しよう。さもなくば増税」と何らか政治権力が信仰を強要するものでもない限りは、政教分離の原則は充分に守られているものと言えます。

 この政教分離の原則と現代政治はいま猛烈に重要なトピックスになっています。すなわち、創価学会を支持母体とする公明党は宗教勢力そのものであって、政教分離の原則から外れてるんじゃないかと思う国民が、一定割合いることです。

 また、先般問題視された旧統一教会(現・世界家庭連合)と同様に、創価学会は悪質なカルト宗教だと指弾する人がいたり、元の日蓮正宗から破門されている創価学会は邪教とまで言い募られたりもします。世間一般の信仰と、宗教を隠れ蓑に問題を起こしたとされる組織とはちゃんと分別しないと駄目です。

 そして、宗教と政治の関わりのむつかしさは、客観的、科学的に白黒線引きがつけられるものではなく、人と人との関わりの中で決まっていくものですから、なかなか第三者が口を挟むのもむつかしい面もあります。

 幸福実現党など具体的な政党だけでなく、自民党内にも神道系の政治団体があり、既存政党への応援を重ねること自体は適法です。宗教が政治に関わることは禁じられていないが、政治が宗教を利用したり迫害することは戒められている、という事実がなぜかきちんと知られていないのは変だなあと思います。